コンテンツ知的財産論 (大阪工業大学・知的財産学部)
文字,音声,静止画および動画のコンテンツに関する権利につき,従来の文学・音楽等との異同に留意しつつ検討する。
前講でも触れたように,私たち人間は,表示される文字やその装飾等を目視することなり,発せられる音声を聞くなりすることで,情報(の内容)の軽重を判断する。しかしコンピュータはあくまで 0 と 1 の計算をするのみで,内容の軽重を判断できない。逆にこのこと ――情報がすべて等価・平等となること―― が,複製・伝達や検索の質を向上させているとも言えよう。
その一方で,等価・平等で扱われる情報の(内容の)意味をコンピュータにも理解・表現できるようにすることもまた,まったく不可能なことではない。文書で行われるマークアップ(マーク付け)がその典型である。
主にインターネット上での文書において用いられるものとしてお馴染みの HTML もまた,こうしたマークアップ言語の一つだ。HTML では,例えば,<p> を段落,<h1> を第1レベルの見出し,<strong> を強調というように,< と > で括られたタグを用いることで文書内の情報の “要素” を指定できる。
こうした言語を用いて適切なマークアップがなされた文書であれば,コンピュータとアプリケーションはこれを解析して,情報の軽重等を視覚的に表示することができるだけでなく,音声によって再現することも可能となる。
かつてウェブ(インターネット)の世界では,米国の CompuServe が開発した画像圧縮フォーマット GIF が幅広く普及していたが,この圧縮技術で用いられているアルゴリズム LZW については米国の Unisys が特許権を有していた(日本でも出願はなされたが=特許公開平8-237138=後に取り下げられているようである。)。
当初 Unisys は LZW の利用について料金等を請求しないこととしていたが,GIF フォーマットが普及しウェブ・ブラウザで標準的にサポートされるようになると方針を転換,実施料を請求しようとした。
これに関して,実施料の請求が,商用利用のソフトウェアだけでなく,フリーで開発された画像ヴューア,画像制作・編集ソフト,あるいはそれらを用いて制作された画像自体にまで及ぶのではないかとの懸念が一般に拡がり,Unisys の方針は世人,特にアマチュアたる一般ユーザの大きな反感を買うことになる。すなわち,多くの画像関係ソフトは GIF フォーマットの対応をやめ,また多くののウェブ制作者が自身のウェブページにおいて GIF フォーマットの画像を用いることをやめた。
また同時にこの反感は,GIF に代わる画像フォーマットの開発の源ともなり,その成果として PNG が得られた。
※動画は文字や静止画よりもはるかに多くの情報量を要するため,圧縮技術はとりわけ重要である。
※同じコンテンツなのに提供手段によって享受できたりできなかったりする可能性が生じる。
動画の圧縮規格においても,上記の静止画におけるそれと同様の事例がある。
米国 DivX, Inc. が開発したコーデック DivX について,一時オープンソースで開発されていたこのコーデックを同社が商用製品に転換したところ,これに反発したプログラマーらによって Xvid が開発された。
かつてニッポン放送系列の BS デジタル・ラジオ局 “LFX488” では “あなたのジュークボックス” という番組において聴取者から広く楽曲のリクエストを受け付けていたが,2006年 4月に同局がインターネット・ラジオ局 “LFX mudigi”へと移行(その後 2007年 4月に現在の “Suono Dolce” に移行)してから,特定のレコード会社やアーティストの楽曲についてはリクエストされても放送できない旨の告知がなされた。これはどういう理由からか,法的根拠を考えてみよう。