知的財産法(朝日大学・法学部,大阪教育大学・教育学部,奈良女子大学・理学部)
講義ノート 第1講: 知的財産を保護する意義
知的財産とは何かをまず考え,これを保護する意義を考察する。
概要
- [1] 知的財産とは何か
- ①知的財産の意義
- ◆特定の情報や知識については社会がそれを保護するべきものと考え,
他の者はそれを許可なく模倣したり,使用することができないようにした権利=財産
- →特定の情報や知識
- 発明:
- 高度な技術的アイディア
- 考案:
- 物品の形状・構造・組合せのアイディア
- 意匠:
- 物品のデザイン
- 商標:
- 商品やサービス(役務)に付されるマーク
- 著作物:
- 小説・絵画・映画・音楽等の創作的表現
- 回路配置:
- 半導体集積回路の回路素子とそれを接続する導線の配置
- 新品種:
- 植物の新規品種
など
- ②なぜ知的財産は保護されるべきか
- ◆ある特定の情報・知識を保護することが,社会における産業・文化の発展に寄与する
- →新たに生み出した発明・著作物等の知識・情報は,一定期間保護することがそれらを生み出す創作活動を刺激し,動機づけしていくに違いない(=インセンティヴ)と,社会が期待している
- ※知的創造サイクル
- ③知的財産法とその体系
- ⑴保護制度の体系
- ⒜不法行為法
- ⒝行為規制型と権利付与型
- ⒞登録型と非登録型
- ⒟創作保護型と信用保護型
- ⑵具体的な知的財産法
-
- 特許法:
- 新規で進歩的な発明に特許権を与える
- 実用新案法:
- 新規で進歩的な考案に実用新案権を与える
- 意匠法:
- 新規で創意的な意匠に意匠権を与える
- 商標法:
- 識別力のある商標に商標権を与える
- 著作権法:
- 著作物・実演等について著作権・著作隣接権を与える
- 半導体集積回路の回路配置に関する法律:
- 回路配置について回路配置利用権を与える
- 種苗法:
- 新品種の育成者に育成者権を与える
- 不正競争防止法:
- 他人の信用にただ乗りするなどの不公正な競争行為を規制
- ⑶知的財産法相互の関連
- [2] 知的財産法制の変遷と課題
- ①知的財産保護の水準
- ⑴保護期間
- ⑵技術水準(進歩性の要求水準,発明の開示要件)
- ⑶侵害に対する救済・制裁の水準
- ②保護の対象の問題
- ⑴医薬,バイオ・テクノロジー,遺伝子関連技術の保護の問題
- ⑵コンピュータ関連技術(プログラムやビジネスモデル)の保護の問題
- ⑶情報通信技術の発達に伴う表示保護(商標,ドメイン名)の問題
- ③創作活動における人と組織
- ④国際的な問題
- ⑴各国権利独立の原則とハーモニゼーション
- ⑵国の技術・文化水準と保護政策(上記⑴と関連)
- ⑶情報化と侵害行為の国際化
- [3] わが国の最近の戦略・政策
- ①知的財産戦略会議の設置と知的財産戦略大綱(2002年)
- ②知的財産基本法の成立と知的財産戦略本部の設置(2002年~2003年)
- ③2005年度(平成17年度) 知的財産推進計画
- ⑴知的財産権の保護の強化
- ⑵模倣品・海賊版対策強化
- ⑶中小・ベンチャー企業の支援
- ⑷コンテンツ流通企業の支援
- ⑸人材育成と国民意識の向上 など
- ④2006年度(平成18年度) 知的財産推進計画 (2006年 6月 8日)
- ⑴出願偏重傾向による技術流出の改善
- ⑵模倣品・海賊版対策強化
(個人輸入の取締り,インターネット・オークションでの取引防止等)
- ⑶企業による知財の戦略的活用の推進
- ⑷中小・ベンチャー企業の支援
- ⑸コンテンツを活かした文化創造国家
(IP マルチキャスト放送の活用,音楽 CD の再販価格維持制度見直し等) など
演習
- 知的財産が保護される意義はどこにあるか,保護の在り方と併せて考えよう。すなわち,現在は一定期間の独占権の付与という形で保護されているが,このほかに保護の態様は考えられるか。また,もし知的財産が保護されなかった場合,社会はどのようになるだろうか。
1,325,799
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