不正競争防止法 (大阪工業大学・知的財産学部&知的財産研究科)
制限列挙の意義を考察する。
弾力性に富んだ抽象的概念を取り入れている法条(例:民1条2項「信義則」・90条「公序良俗」)
わが国の不競法には一般条項がない →制限列挙方式
何が不正競争行為として規制されるかを具体的に列挙している(2条1項1号~15号)
原告Xはソフトウェア業等を目的とする有限会社であり,被告Yは測量器,事務機等の販売・修理を業とする有限会社である。なお,Xの代表者であるAは,X設立までの約 5年間Yに営業社員として勤務していた。
Xは,訴外Bが平成 11年 1月に作成した高知県の公共事業入札等の書類作成支援ソフトウェア「オートくん(バージョン 1)」に関する著作権等一切の権利を譲り受け,同年 4月ころ「オートくん(バージョン 2.00)」(以下「本件ソフトウェア」という。)を完成させて一般顧客に対する販売を開始した。他方Yは,平成 11年 4月ころ「高知県版書類作成支援ソフト(バージョン 1.08)」(以下「Yソフトウェア」という。)を製作し,これを営業先に頒布するとともにインターネット上のYのウェブにおいて公衆送信していた(以下これら一連の行為を「Y行為」という。)。
Xは,①主位的に著作権侵害(著 112条 1項)に基づき,また②予備的に一般不法行為(民 709条)に基づき,Y行為の差し止めと合計 1200万円の損害賠償を請求して提訴した。すなわちXの主張するところは,①Yソフトウェアは著作物たる本件ソフトウェアを複製または翻案したものであり,Y行為はXの著作権(複製権,翻案権)を侵害し,または,②Yソフトウェアは本件ソフトウェアのデッドコピーであり,さらにこれを頒布・公衆送信するYの営業活動はXに対する営業妨害というその目的および態様において取引通念を逸脱した違法なものであるから,不正競争防止法 2条 1項 3号の趣旨に鑑みて一般不法行為が成立する,というものである。
損害賠償の一部を認容。
Ⅰ 本件ソフトウェアは,……汎用表計算ソフト……のマクロ機能を使用してビジュアルベーシック言語により書かれたプログラムであり,〔その構成要素のうち土木関係書類書式が入力された〕帳票部分は,……誰が作成しても同一又は類似の記載にならざるを得ないから,〔これ〕のみで独自に著作物とすることはできない〔が,〕プログラム中の命令の組み合わせについては,作成者……の個性が現れているものと認められ,これら一連の命令部分と帳票部分を組み合わせることにより,……Xの意図する機能を実現するものといえる。そうすると,本件ソフトウェアは,全体としては,……プログラムの「表現」に創作性が認められるから,著作物に当たると認めるのが相当である。
Ⅱ Yソフトウェアは,本件ソフトウェアとは……構造,機能,〔コードの〕表現のいずれについてもプログラムとしての同一性があるとは認められ〔ず〕,Yソフトウェアは,本件ソフトウェアを複製又は翻案したものとはいえない。〔……著作物性の認められない〕帳票部分においてYソフトウェアが本件ソフトウェアに酷似し,前者が後者をデッドコピーした徴表があるとしても……,Yソフトウェアが本件ソフトウェアを複製又は翻案したことを肯定する根拠とはならない。〔主位的請求を棄却〕
Ⅲ 〔Yソフトウェアおよび本件ソフトウェア両者のワークシート(以下それぞれ「Yシート」および「本件シート」という)を〕と対比すると,〔シート・文字の大きさ等の同一性や入力例の矛盾点の一致などの点において,Yシート全体の 62.8%〕が本件シートに依拠していることを示す徴表を有することが認められ〔,また〕Yには〔Xと〕共通する顧客等からの情報によって,……本件ソフトウェアにアクセスする機会はあったと推定される。そうすると,これらのYシート……は,……本件シートを複製した上で,これを改変したものと推認され〔る。さらに認定事実から〕Yは,……自社から独立し,……Yと競業関係に入ったA及びXが本件ソフトウェアを販売するのを妨害する意図をもって,〔Y行為〕を行ったものと推認される。
民法 709条にいう……権利侵害は,必ずしも厳格な法律上の具体的権利の侵害であることを要せず,法的保護に値する利益の侵害をもって足りるというべき〔ところ,相当の労力・費用をかけて作成された本件ソフトウェアの〕帳票部分をコピーして,作成者の販売地域と競合する地域で無償頒布する行為は,他人の労力及び資本投下により作成された商品の価値を低下させ,投下資本等の回収を困難ならしめるものであり,著しく不公正な手段を用いて他人の法的保護に値する営業活動上の利益を侵害するものとして,不法行為を構成するというべきである。〔予備的請求を認容〕