不正競争防止法 (大阪工業大学・知的財産学部&知的財産研究科)
周知表示混同惹起行為(2条1項1号)
信用へのただ乗り規制,取引秩序の公正維持という目的から,一般の意味よりも広く
混同が生じるかどうかの観点から弾力的に
類似判断の指標
ある者の商品・営業を,他の者(表示所有者)の商品・営業と錯誤すること
現に混同の結果がなくても,混同のおそれをもたらせば足りる
広義の混同も含む
※上記②③の場合において,営業上の利益を侵害され,または侵害されるおそれがある者は,上記使用等を行う者に対して自己の商品・営業との混同防止表示を付すよう請求できる(同条2項)。
5年以下の懲役もしくは500万円以下の罰金または併科(21条2項1号)
※「不正の目的」を要する
※非親告罪(同条3項の反対解釈)
X(ギブソン・ギター・コーポレーション=原告・控訴人)は,1894年の一職人の創業に由来する米国のエレクトリック・ギター,フォーク・ギター等の製造会社。Y(株式会社フェルナンデス=被告・被控訴人)は,1969年創業の日本の楽器メーカーである。
Xは,1952年にレスポール・モデルと称するエレクトリック・ギター(以下「X製品」という)を開発・設計,X製品は現在に至るまで(一時製造が中止された時期もあったが)エレクトリック・ギターの代表的モデルの一つとなる。他方Yは,設立されて間もない1970年代初めより現在に至るまで,“Burny” というブランドでX製品のコピー・モデルのエレクトリック・ギター(以下「Y製品」という)を製造・販売している。
Xは,Yに対し,主位的には不正競争防止法2条1項1号を根拠としてY製品の製造・販売等の差し止めと損害賠償を求め,予備的に不法行為(民法709条)を根拠に損害賠償を求めた。第一審(東京地裁)はXの請求を棄却,Xが控訴。
控訴棄却。
Ⅰ X製品は、遅くとも昭和48年(1973年)ころには、我が国のロック音楽のファンの間で、エレクトリックギターにおける著名な名器としての地位を確立し、それとともに、X製品の形態も、Xの商品であることを示す表示として周知となったものと認められる〔が、認定〕事実の下では、このようにしていったん獲得されたX製品の形態の出所表示性は、遅くとも平成5年より前までには、事実経過により既に消滅したものというほかない。すなわち、X製品の形態が出所表示性を獲得した前後のころから、現在に至るまで20年以上にわたって、数にして多い時には10数社の国内楽器製造業者から30以上ものブランドで、類似形態の商品が市場に出回り続けてきたという事実がある以上(しかも、この事実に対し、平成5年(1993年)までの間は、Xによって何らの対抗措置を執られていないことは、X自身認めるところである。)、需要者にとって、商品形態を見ただけで当該商品の出所を識別することは不可能な状況にあり、したがって、需要者が商品形態により特定の出所を想起することもあり得ないものといわざるを得ないからである。
この点につき、Xは、我が国で製造販売されていたX製品の模倣品は、模倣品であることが明示されて流通に置かれていたのであり、模倣品を製造販売する業者は、自らが、その形態はXの商品のものであって、自社の商品表示ではないことを明らかにしているのであるから、これら模倣品が出回っていたことによってX製品の形態の有する出所表示機能が希釈され、X製品の形態が出所表示機能を失うことはあり得ない旨主張する〔が〕、需要者が、X製品の形態の商品の中には、X製品を模倣したものも多数あることを認識しているということは、需要者が、X製品の形態の商品の形態を見てXを含む複数の出所を想定することを意味するものであって、これは、とりもなおさず、X製品の形態自体は特定の出所を表示するものとして機能していないことを物語るものである。
Ⅱ 商品形態の模倣行為は、不正競争防止法による不正競争に該当しない場合でも、取引界における公正かつ自由な競争として許される範囲を著しく逸脱し、それによって被控訴人の法的利益を侵害する場合には、不法行為を構成するものというべきである〔ところ、事実〕認定のとおり、Yは、エレクトリックギターの著名な名器であるX製品の顧客吸引力に便乗して利益を挙げようとして、これに似せた精巧な模倣品であることを売り物としてY製品の製造、販売をしたものであり、……〔この〕模倣行為は、その当初の段階においては、不法行為の要件としての違法性を有するものとして開始され、継続されていたものというべきである。
しかしながら、同様の模倣行為が続いた場合、それが公正かつ自由な競争として許される範囲から逸脱する度合いは、時の経過とともに生ずる状況の変化に応じて変化することがあり得るのも当然というべきであ〔り、〕……この点につき本件において極めて重要な意味を有するのは、Yを含む多数の楽器製造業者による……模倣行為が長年にわたって継続されてきており、その結果、X製品の形態は、X創作の名器に由来することが知られつつ、Xを含むどの楽器製造業者のものとしても出所表示性を有さないものとなって、その意味で、原判決にいうエレクトリックギターの形態における一つの標準型を示すものとして需要者の間に認識されるに至っているとの事実、及び、Xが、平成5年(1993年)までの20年以上にわたってこれを放置し続けてきたという事実である。……このようにみてくると、本件でXが不法行為としてとらえ損害算定の根拠としている期間(平成5年9月3日から平成8年9月2日まで)のYによる模倣行為については、たといそれがXから対抗措置を執られた後のものであったとしても、もはや不法行為の要件としての違法性を帯びないものというべきである。
X(原告)は全国共通図書券の発行・販売を行っている株式会社であり,Y(被告)は中古書籍・CD等の販売等を業としている株式会社である。
Yは,平成8年頃から,その運営する店内において「図書券の利用が可能である」旨の掲示をし,同内容のチラシを商圏内において配布し,顧客の持参する全国共通図書券と図書との引換えを行っていた。
Xは,Yの上記行為が不正競争防止法2条1項1号所掲の不正競争に該当するとして,①全国共通図書券と図書との引換えの差し止め,②店舗内に「図書券の利用が可能である」旨の掲示をし,同内容のチラシを配布することの差し止め,③領収書への図書券による領収の欄を印刷することの差し止め,④前記②の掲示およびチラシの廃棄,ならびに⑤弁護士費用等の損害賠償を求めた。
店舗内の掲示の差し止めおよび当該掲示の廃棄ならびに損害賠償の一部を認容。
Ⅰ 認定事実によれば,遅くとも平成6年ころには一般消費者の間で,全国の多数の新刊図書を扱う書店において図書券を用いて図書を購入することが可能であること及びこれらの書店は図書券による代金決済を可能とする組織の加盟店であることが,広く認識されていたものと認めることができ〔,また〕新聞広告〔等〕において,X加盟店において図書券の利用が可能である旨の表示がされ,また,X加盟店の各店舗においても当該店舗において図書券の利用が可能である旨を表示したポスターなどが掲示されていたことを併せ考慮すれば,「図書券の利用が可能である」旨の表示は,遅くとも平成6年ころにはX加盟店を示す表示として一般消費者の間に広く認識されていたものというべきである。
すなわち,特定の種類の商品券,プリペイドカードやクレジットカードを利用しての商品の購入が,当該商品券等の代金決済システムを行う特定の組織に加盟する店舗においてのみ可能であるような場合には,ある店舗において当該商品券等の利用が可能であることを表示することは当該店舗が当該組織の加盟店であることを顧客に示すものであり,このような場合には,当該商品券等の利用が可能である旨を表示することが,特定の組織に属する店舗の営業であることの表示となるものである。この場合には,そのような特定の商品券等による代金決済を行う組織の加盟店であることが,当該店舗の社会的な信用を高めることも少なくないのであって,このような点を考慮すれば,当該商品券等の利用が特定の組織に属する店舗のみにおいて可能であることが需要者の間に広く認識されている場合には,当該商品券等の利用が可能である旨の表示が不正競争防止法2条1項1号にいう周知の「商品等表示」に該当し得るものというべきである。
Ⅱ しかしながら,……チラシの記載は,旅行券・オレンジカード・ハイウェイカード・切手・印紙に続けて図書券を挙げた上でその利用が可能である旨を記載したものであるから,現金の代わりに代物弁済として受け入れる対象として,旅行券〔等〕と並列的に図書券を掲げたにすぎず,単に代物弁済の対象についての事実を記載したにすぎないものと認められる。したがって,前記のチラシの記載は,営業主体と何らかの関連をもった記載ということができず,商品等表示の使用に当たらないから,Yが前記チラシを配布する行為は,不正競争防止法2条1項1号所定の不正競争行為に該当しない。
また,図書券と図書とを引き換えること自体は,代物弁済として行い得る行為であり,需要者に対して何らかの表示をしているものともいえないから,それ自体は不正競争行為に該当するものではない。代金を図書券で受領した場合にその旨をレシートに記載することも,単なる弁済方法に関する事実の記載であり,需要者に対する表示ということができないから,不正競争行為に該当しない。