不正競争防止法 (大阪工業大学・知的財産学部&知的財産研究科)
技術的制限手段の無効化行為(2条1項10号・11号),ドメイン名の不正取得・使用行為(2条1項12号)
「機能のみを有する……プログラム」に該当すると考えられる
著作権・著作者人格権・実演家人格権・著作隣接権の侵害となる行為の防止・抑止のための手段
X₁(原告=任天堂株式会社)は携帯型ゲーム機「ニンテンドーDS」等(以下「DS」という)およびそのゲームソフトを製造・販売するメーカーであり,その余の原告54社はゲームソフトの制作等を業とする会社で(以下原告55社を合わせて「Xら」という),XらはいずれもDS用ゲームソフトを格納したゲーム・カード(以下「DSカード」という)を製造・販売している。Yら(被告=嘉年華株式会社ほか合計5社)はそれぞれ,ソフトウェアの企画・開発等や日用雑貨等の輸入・販売等を業としている会社である。
Yらはいずれも,DSカードから複製したプログラム(以下「本件吸い出しプログラム」といい,本来であればこれはDS本体で動作し得ない)等をDS本体において実行可能ならしめる「マジコン」(マジックコンピュータの略称)と称する装置(以下「Y装置」という)を輸入・販売していた。
Xらは,上記Yらの行為が不正競争防止法2条1項10号に該当するものとして,その行為(Y装置の譲渡等)の差止めを求めた。すなわち,DS本体とDSカードは組となって,DSカードに記録されている特定信号(以下「本件特定信号」という)を使用してプログラムの実行を制限している(以下,この仕組みを「X仕組み」という)ところ,X仕組みは不正競争防止法2条7項にいう「技術的制限手段」であり,Y装置は技術的制限手段を無効化する機能のみを有するもので,Yらの行為によりXらの営業上の利益が侵害された,というのである。
仮執行の一部を除き(ほぼ全部)認容。
Ⅰ ……我が国におけるコンテンツ提供事業の存立基盤を確保し,視聴等機器の製造者やソフトの製造者を含むコンテンツ提供事業者間の公正な競争秩序を確保するために,必要最小限の規制を導入するという観点に立って,……コンテンツ提供事業者がコンテンツの保護のためにコンテンツに施した無断複製や無断視聴等を防止するための技術的制限手段を無効化する装置を販売等する行為を不正競争行為として規制する〔という〕不正競争防止法2条1項10号の立法趣旨と,無効化機器の1つである MOD チップ〔=媒体に格納された特殊な信号(パソコンで複製できない)をゲーム機が探知してゲーム・プログラムを実行するという手段を無効化するもの〕を規制の対象としたという立法経緯に照らすと,不正競争防止法2条7項の「技術的制限手段」とは,コンテンツ提供事業者が,コンテンツの保護のために,コンテンツの無断複製や無断視聴等を防止するために視聴等機器が特定の反応を示す信号等をコンテンツとともに記録媒体に記録等することにより,コンテンツの無断複製や無断視聴等を制限する電磁的方法を意味するものと考えられ,〔ある信号を検知した場合にプログラム等の実行を制限する〕検知→制限方式のものだけでなく,〔ある信号を検知した場合にプログラム等の実行を可能とする〕検知→可能方式のものも含むと解される。
Ⅱ ……不正競争防止法2条1項10号の「のみ」は,必要最小限の規制という観点から,規制の対象となる機器等を,管理技術の無効化を専らその機能とするものとして提供されたものに限定し,別の目的で製造され提供されている装置等が偶然「妨げる機能」を有している場合を除外していると解釈することができ,これを具体的機器等で説明すると,MOD チップは「のみ」要件を満たし,パソコンのような汎用機器等及び無反応機器は「のみ」要件を満たさないと解釈することができ〔,〕Y装置は,以上のように解された……「のみ」要件を満たしている。……そして,この点は,Y装置の使用実態を併せ考慮しても同様である。すなわち,証拠……及び弁論の全趣旨によれば,数多くのインターネット上のサイトに極めて多数の本件吸い出しプログラムがアップロードされており,だれでも容易にダウンロードすることができること,Y装置の大部分が,そして大部分の場合に,本件吸い出しプログラムを使用するために用いられていることが認められ,Y装置が専ら自主制作ソフト等の実行を機能とするが,偶然「妨げる機能」を有しているにすぎないと認めることは到底できないものである。
Ⅲ 前記……のとおり,数多くのインターネット上のサイトで極めて多数の本件吸い出しプログラムがアップロードされており,だれでも容易にダウンロードすることができ,Y装置の大部分が,そして大部分の場合に,本件吸い出しプログラムを使用するために用いられているものであるから,Y装置により,Xらは,DSカードの製造販売業者として,本来販売できたはずのDSカードが販売できなくなり,現実に営業上の利益を侵害されているものと認められる。X₁は,DS本体の製造販売業者としても,X仕組みの技術的制限手段が妨げられてその対策を講じることを余儀なくされ,現実に営業上の利益を侵害されているものと認められる。