不正競争防止法 (大阪工業大学・知的財産学部&知的財産研究科)
講義ノート 第8講: 不正競争行為(各論)⑸
技術的制限手段の無効化行為(2条1項10号・11号),ドメイン名の不正取得・使用行為(2条1項12号)
概要
技術的制限手段の無効化行為
- [1] 趣旨
- デジタル・コンテンツの提供に際してなされるコピー・コントロール(複製行為を禁止し,またはその回数を制限する措置等)やアクセス・コントロール(特定の者にのみ視聴・実行等を可能とさせる措置等)のための技術的制限手段を無効化する行為を,コンテンツ提供者の経済的利益や信用を不当に損なうもので不公正であるとする
- [2] 意義(2条1項10号・同項11号・7項・8項)
- ①10号の技術的制限手段
- コンテンツ記録媒体またはコンテンツ視聴・実行・記録機器の購入者・所持者すべてに対して一律に視聴・実行または記録を禁止する
- →コンテンツとともに記録される信号に視聴等機器が反応して視聴・実行・記録できなくする
- 例:
- マクロビジョン(ビデオ),Serial Copy Management System(MD,DAT),Copy Generation Management System(DVD),Content Scrambling System(DVD),ゲームソフトの複製物実行不可機能
- ②11号の技術的制限手段
- 特定の者(契約の対象者)以外の者によるコンテンツの視聴・実行または記録を禁止する
- →コンテンツを何らかの方法により変換し,特定の者において再変換させることでその者が視聴等できるようにする
- 例:
- [3] 規制される行為
- 上記①または②を妨げることによりコンテンツの視聴・実行・記録を可能とする機能のみを有する装置またはプログラムの譲渡等
- ※上記機能のみでなく,他の機能と必然的に一体となっている装置等は該当しない
- ※もっとも,上記機能のみで単体のモジュール(プログラム)となっていて当該モジュールが含まれるソフトウェアの場合は,当該モジュールをもって上記
「機能のみを有する……プログラム」
に該当すると考えられる
- [4] 著作権法上の技術的保護手段
ドメイン名の不正取得・使用行為
- [1] ドメイン名(ドメイン・ネーム)とは
- インターネット上で個々のコンピュータを識別するために割り当てられる番号,記号または文字の組合せ(IPアドレス)に対応する文字,番号,記号その他の符号またはこれらの結合(2条9項)
- [2] ドメイン名規制の趣旨
- ドメイン名は原則として誰でも先着順に登録できるものだが,これを利して不正の目的で他人の商品・役務表示と同一・類似のドメイン名を取得等する(サイバースクワッティング:cyber-squatting)のは不公正である
- [3] 要件
- ①主観的要件
- ⑴不正の利益を得る目的(図利),または⑵他人に損害を加える目的(加害)
- ※誤認混同を要件としていないこととバランス
- ▼大阪地判平16・2・19 平成15年(ワ)第7208号〔自由軒事件〕
- 「不正の利益を得る目的」とは,公序良俗に反する態様で自己の利益を不当に図る目的をいい,「他人に損害を与える目的」とは,他人に対して財産上の損害や信用失墜などの有形無形の損害を加える目的をいう。
- ②特定商品等表示
- 人の業務に係る氏名,商号,商標,標章,その他の商品または役務を表示するもの
- ※2条1項1号・2号の「商品又は営業を表示する」より狭い(商品の容器・包装等が含まれない)
- ▶ドメイン名保護の国際的ルールが「商品・役務表示」の保護を求めていることによる
- ▶自他識別機能・出所表示機能は必要だが,周知性・著名性は不要
- ③同一または類似
- ④
- ⑴取得:
- 登録事業者に登録申請を行い,または他の取得者・保有者から移転を受けて,ドメイン名を使用する権利を自己のものとすること
- ⑵保有:
- ドメイン名を使用する権利を継続して有すること
- ⑶使用:
- ドメイン名をウェブサイト開設,メール・アドレス作成等の目的で用いること
- [4] 裁判外紛争処理
- ①趣旨:
- ドメイン名に関する紛争を簡易迅速に行うため(2000年10月から)
- ②紛争処理機関:
- 日本知的財産仲裁センター(Japan Intellectual Property Arbitration Center)
- ③裁定とその効力:
- ドメイン名の登録の移転を命じる。もっとも,当事者は当該紛争処理手続とは無関係に当該紛争に係る訴えを裁判所に提起することができる。
- [5] その他の裁判例
- ▼東京地判平14・4・26 平成13年(ワ)第2887号 〔goo.co.jp 事件〕
- ▼東京高判平14・10・17 平成14年(ネ)第3024号 〔goo.co.jp 事件控訴審〕
- JIPAC のドメイン名移転命令の裁定を不服とした原告が,「goo.co.jp」を使用する権利を有することの確認を求めた(棄却)。
- ▼東京地判平14・5・30 平成13年(ワ)第25515号 〔IYBANK.CO.JP 事件〕
- JIPAC のドメイン名移転命令の裁定を不服とした原告が,「WWW.IYBANK.CO.JP」につき原告の同意なしに登録移転できないこと等の確認を求めた(棄却・却下)。
- ▼東京地判平14・7・15 判時1796号145頁 〔mp3.co.jp 事件〕
- 「mp3.co.jp」の登録者が,被告の当該ドメイン名使用差止請求権の不存在確認を求めた例(認容)。
用語
演習
- 技術的制限手段に関する不正競争行為と,著作権法の技術的保護手段に関する規定との意義や制度趣旨の異同について検討しよう。
- ドメイン名に対する不正競争行為と,周知表示混同惹起行為(1号)ないし著名表示冒用行為(2号)の規制との要件を比較し,さらに,両者に基づく請求が競合した場合に,後者に係る事実認定がドメイン名のそれに及ぼす影響があるかどうかを考えよう。
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