不正競争防止法 (大阪工業大学・知的財産学部)
2008年 1月 21日 実施
X(原告)は全国共通図書券の発行・販売を行っている株式会社であり,Y(被告)は中古書籍・CD等の販売等を業としている株式会社である。
Yは,平成8年頃から,その運営する店内において「図書券の利用が可能である」旨の掲示をし,同内容のチラシを商圏内において配布し,顧客の持参する全国共通図書券と図書との引換えを行っていた。
Xは,Yの上記行為が不正競争防止法2条1項1号所掲の不正競争に該当するとして,①全国共通図書券と図書との引換えの差し止め,②店舗内に「図書券の利用が可能である」旨の掲示をし,同内容のチラシを配布することの差し止め,③領収書への図書券による領収の欄を印刷することの差し止め,④前記②の掲示およびチラシの廃棄,ならびに⑤弁護士費用等の損害賠償を求めた。
店舗内の掲示の差し止めおよび当該掲示の廃棄ならびに損害賠償の一部を認容。
認定事実によれば,遅くとも平成6年ころには一般消費者の間で,全国の多数の新刊図書を扱う書店において図書券を用いて図書を購入することが可能であること及びこれらの書店は図書券による代金決済を可能とする組織の加盟店であることが,広く認識されていたものと認めることができ〔,また〕新聞広告〔等〕において,X加盟店において図書券の利用が可能である旨の表示がされ,また,X加盟店の各店舗においても当該店舗において図書券の利用が可能である旨を表示したポスターなどが掲示されていたことを併せ考慮すれば,「図書券の利用が可能である」旨の表示は,遅くとも平成6年ころにはX加盟店を示す表示として一般消費者の間に広く認識されていたものというべきである。
すなわち,特定の種類の商品券,プリペイドカードやクレジットカードを利用しての商品の購入が,当該商品券等の代金決済システムを行う特定の組織に加盟する店舗においてのみ可能であるような場合には,ある店舗において当該商品券等の利用が可能であることを表示することは当該店舗が当該組織の加盟店であることを顧客に示すものであり,このような場合には,当該商品券等の利用が可能である旨を表示することが,特定の組織に属する店舗の営業であることの表示となるものである。この場合には,そのような特定の商品券等による代金決済を行う組織の加盟店であることが,当該店舗の社会的な信用を高めることも少なくないのであって,このような点を考慮すれば,当該商品券等の利用が特定の組織に属する店舗のみにおいて可能であることが需要者の間に広く認識されている場合には,当該商品券等の利用が可能である旨の表示が不正競争防止法2条1項1号にいう周知の「商品等表示」に該当し得るものというべきである。
しかしながら,……チラシの記載は,旅行券・オレンジカード・ハイウェイカード・切手・印紙に続けて図書券を挙げた上でその利用が可能である旨を記載したものであるから,現金の代わりに代物弁済として受け入れる対象として,旅行券〔等〕と並列的に図書券を掲げたにすぎず,単に代物弁済の対象についての事実を記載したにすぎないものと認められる。したがって,前記のチラシの記載は,営業主体と何らかの関連をもった記載ということができず,商品等表示の使用に当たらないから,Yが前記チラシを配布する行為は,不正競争防止法2条1項1号所定の不正競争行為に該当しない。
また,図書券と図書とを引き換えること自体は,代物弁済として行い得る行為であり,需要者に対して何らかの表示をしているものともいえないから,それ自体は不正競争行為に該当するものではない。代金を図書券で受領した場合にその旨をレシートに記載することも,単なる弁済方法に関する事実の記載であり,需要者に対する表示ということができないから,不正競争行為に該当しない。