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著作権法 (東京情報大学・総合情報学部・情報文化学科)

第4講 著作者の権利

  1. 著作者の権利
  2. 著作財産権
  3. 著作者人格権

著作者の権利

著作物(第3講参照)を創作する者を「著作者」といいます(著2条1項2号)。この著作者が,自己の著作物について「著作権」を有することになります。なお,ここでいう著作権は「広義の著作権」で,これには「著作財産権(狭義の著作権)」と「著作者人格権」との両方が含まれます(著17条1項)。

ところで,著作者はいつの時点で著作権を取得するのでしょうか。わが国では,著作権の発生および保護の要件について登録・納本や表示などの方式を何ら要しない「無方式主義」を採用していますので,著作者はただ著作物を創作することのみによって著作権を取得します(著17条2項・51条1項)。「創作する」というのは「完成」を意味するものではありませんから,作品が未完成であってもそこに著作物性(著2条1項1号参照)が認められれば,その作品(著作物)についてその著作者が著作権を有することとなります(「無方式主義」と「方式主義」については第11講参照」)。

なお,著作物の創作行為,すなわち「思想・感情の創作的表現」に複数の者が関わった場合には,創作をした者全員がその著作物の著作者ということになります。そしてそのような著作物を「共同著作物」といい,その著作権は複数の著作者の「共有(共有著作権)」ということになります。また,一定の要件を満たすと,自然人ではなく法人等の団体が著作者となる場合があります(この「職務著作」については第10講で改めて詳しく触れます。)。

著作財産権

「著作財産権(財産権としての著作権)」とは,著作者がその著作物を独占的に支配して財産的利益を受ける権利をいい,単に「著作権」という場合は通常この著作財産権を指します(狭義の著作権)。著作財産権の内容は,著作物の利用態様ごとにそれぞれ支分権として著作権法に規定されており,著作者はそれぞれの態様による利用についての独占的排他的権利(他人の利用を許諾・禁止する権利)を有しています。以下,具体的に支分権とその内容を見ていきましょう。

複製権 (著21条)

「複製」とは,印刷・写真・複写(ゼロックス・コピー等)・録音・録画その他の方法による有形的再製をいいます(著2条1項15号)。脚本のような演劇用の著作物にあっては,その著作物の上演・放送などを録音・録画することも,また,建築の著作物にあっては,建築に関する図面に従って建築物を完成することも,「複製」に含まれます。

上演権・演奏権 (著22条)

「演奏」は文字どおり音楽の演奏(歌唱もこれに含まれます。)をいい,「上演」とは演奏以外の方法で著作物を演ずること(例:演劇など)をいいます(著2条1項16号)。これらと後掲の「口述」をまとめて,有形的再製たる複製に対して,「無形的再製」ともいいます。なお,上演・演奏・口述を録音・録画したものを再生することや,上演・演奏・口述を電気通信設備を用いて伝達すること(後掲の公衆送信や上映に該当するものを除く。)も,「上演」「演奏」「口述」に含まれます(著2条7項)。

上映権 (著22条の2)

「上映」とは,著作物を映写幕その他の物(ディスプレイ等)に映写することをいい,またこれに伴って映画の著作物に固定されている音(サウンド・トラック)を再生することもこれに含まれます。ただし,公衆送信(後掲)によって画面に写し出されるものは含まれません(著2条1項17号)。

公衆送信権 (著23条)

「公衆送信」とは,公衆によって直接受信されることを目的として無線通信または有線電気通信の送信を行うことをいいます。この場合,有線電気通信設備の送る側と受ける側の両方の部分が同一構内(区域内)にあるものによる送信はこれに当たりませんが,例外的にプログラム著作物の同一構内(区域内)送信(いわゆるLAN)は「公衆送信」に該当します(著2条1項7号の2)。この公衆送信には「放送」(著2条1項8号),「有線放送」(同9号の2)および「自動公衆送信」(いわゆるインタラクティヴ送信)(同9号の4)が含まれ,著作権の支分権としての公衆送信権は,自動公衆送信における「送信可能化」(ネットワークに接続されているサーバーに著作物をアップロードし,または著作物が記録・入力されているサーバーをネットワークに接続すること。著2条1項9号の5。)にも及びます。また,公衆送信される著作物を受信装置を用いて公に伝達することについても,権利が働きます(著23条2項)。

口述権 (著24条)

「口述」とは,朗読その他の方法で著作物を口頭で伝達することをいいます(著2条1項18号)。ただし,例えば演劇で俳優が台詞をいうのは「実演」(著2条1項3号)に当たるので,これには含まれません。この口述権は言語の著作物のみについて働きます。例えば,この講義録を著作者である私(関堂)の許諾を得ずに読みあげることは,口述権の侵害ということになります。

展示権 (著25条)

著作物の原作品(複製物でないオリジナル)を公に展示することを内容とします。美術の著作物または未発行の写真の著作物について働きます。写真に関しては,原作品と複製物との区別が特に難しく,大量のプリントを原作品と称してそのすべてに展示権を働かせるのは衡平を失するゆえ,これを未発行のものに限っています。

頒布権 (著26条)

「頒布」とは,有償・無償を問わず著作物を公衆に譲渡または貸与することをいい,映画の著作物または映画の著作物において複製されている著作物(映画の脚本やサウンド・トラックの音楽など)にあっては,これらを公衆に提示することを目的として当該映画の著作物の複製物(プリント・フィルム等)を譲渡または貸与することも,これに含まれます(著2条1項19号)。頒布権は,映画の著作物と映画の著作物において複製されている著作物のみに働く支分権で,これらの著作者は当該映画著作物のプリント等が譲渡・貸与されることをコントロールできます。

譲渡権 (著26条の2)

原作品または複製物の譲渡によって著作物を公衆に提供することを内容とします。ただし,この譲渡権が行使できるのは著作物の原作品・複製物につき一度だけで,いったん適法に公衆に譲渡された原作品・複製物についてはそれ以降譲渡権が働きません(これを権利の「消尽」といいます。)。なお,この譲渡権と後掲の貸与権は,映画の著作物(と映画の著作物において複製されている著作物)には付与されていません。映画の著作物ではこうしたコントロールを頒布権(前掲)によって行うことができるからです(ただし,例えば映画のサウンド・トラック音楽が映画とは別にCD等に複製されている場合,そうした複製物には譲渡権・貸与権が働きます。)。

貸与権 (著26条の3)

複製物の貸与によって著作物を公衆に提供することを内容とします。この「貸与」には,例えば買戻特約つき販売や,事前に会費を徴収した会員のみに一定期間無償で提供するといったような迂回行為も含まれます(著2条8項)。映画の著作物にはこれが及ばないことは,前述のとおりです。

翻訳権・翻案権 (著27条)

翻訳・編曲・変形または脚色・映画化するなど,著作物を翻案することを内容とします。「改作利用権」と称することもあります。

二次的著作物の利用に関する原著作者の権利 (著28条)

「二次的著作物」とは,前掲の翻訳・翻案によって創作される著作物のことをいいます(著2条1項11号)。そのような二次的著作物の元である原著作物の著作者は,当該二次的著作物の利用に関して,当該二次的著作物の著作者が有するのと同一の権利を有します。すなわち,ある二次的著作物の複製については,当該二次的著作物の著作者が有する複製権はもちろん,その原著作物の著作者の複製権も同時に働くことになります。そのような二次的著作物の利用に際して,利用者が二次的著作物の著作者から許諾を得たからといって,原著作物の著作者からの許諾が要らなくなるということはありません(著11条)。

ところで,著作財産権はその全部または一部を他人に譲渡することができます(著61条)。すなわち,著作権をまるごと譲渡することははもちろん,例えば複製権だけというように支分権ごとに譲渡することもできますし,一定の期間を区切って譲渡するというのも可能です。著作権は原始的には著作者に帰属する権利です(ですから著作権法21条以下の各条文では「著作者は,…する権利を専有する。」となっています。)が,著作権が譲渡された場合は,著作権者と著作者は別々の人(または団体)ということになります。

著作者人格権

著作者がその著作物に対して有する人格的・精神的権利の総称を「著作者人格権」といいます。このような権利が認められるのは,著作物が(前項で述べたように)資本主義経済市場において財産的価値を有するものであるとともに,著作者の思想・感情に由来する「精神財(geistiges Eigentum)」でもあるからです。具体的には,以下のような権利があります。

公表権 (著18条)

著作者が,その未公表(著作者の同意を得ずに公表されてしまったものも含まれます。)の著作物を公表するかしないか,またどのように公表するかを決定しうる権利です。もっとも,例えばまだ公表されていない美術の著作物の原作品を著作者自らが他人に譲渡した場合に,当該他人がそれを展示することについて著作者の公表権が働くとなると衡平を欠くことにもなりますから,そのような場合には当該著作者の同意があったものと推定されるなど,公表権には一定の制限があります(著18条2~4項)。また最近では,とりわけ実用性の高い著作物(プログラムなど)については,公表の可否や時期・態様が戦略的に決せられることも少なくなく,人格権としてよりもむしろ財産権としての性格が強調される面もあります。

氏名表示権 (著19条)

著作物の原作品に,または公衆の提供・提示の際に,その著作者が自己の氏名(実名・変名)を著作者名として表示するかどうか,またどのように表示するかを決定しうる権利です。二次的著作物の場合は,当該二次的著作物の著作者の氏名表示権はもちろん,その原著作物の著作者の氏名表示権も働くことになります。なお,例えばラジオ放送で音楽著作物を流すような場合には著作者(作詞家・作曲家)の氏名を紹介しないのが通常となっていますが,そのような省略も一定の範囲で認められています(著19条3項)。

同一性保持権 (著20条)

著作物およびその題号が,著作者の意に反して変更・切除等(改変)されるのを防ぐ(著作物・題号の同一性を保持するための)権利です。例えば,ある音楽著作物の著作者に無断でこれを編曲したような場合には,その編曲者は当該著作者の著作財産権としての翻案権(改作利用権)を侵害すると同時に,著作者人格権としての同一性保持権をも侵害することとなるのです。なお,著作物の性質や利用態様などにより一定の範囲でやむを得ない改変が認められており,その場合は著作者の同一性保持権が制限されます(著20条2項)。

なお,著作者人格権は著作者の一身専属権で他人に譲渡することはできませんし,相続によっても承継されません(著59条,民896条)が,著作者の死後もその著作者人格権の侵害となるべき行為をすることは許されず,その場合は著作者の一定の遺族がそのような行為を差し止めることができます(著60条・116条)。





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