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著作権法 (東京情報大学・総合情報学部・情報文化学科)

第5講 著作権の制限(1)

  1. 著作権の保護期間
  2. 著作権の制限(総論)
  3. 個人的目的による制限(1) ―私的使用目的の複製―

著作権の保護期間

有体物に係る所有権は,その所有者が亡くなったとしても,その相続人がある限りこれらに承継され,権利自体は永久に存続するものです(もっとも例外的に,取得時効の反射的効果として原所有者の所有権が消滅することがありますが。)。しかし著作権や工業所有権は,これを永久に存続するものとすれば,これら権利の客体である著作物や発明・意匠等を利用するのに未来永劫に渡って権利者(またはその承継者)の許諾を求め,あるいはこれにロイヤルティを支払わなければならず,かえって知的財産の利用を妨げることにもなり,これでは社会全体の文化・産業の健全な発展が望めなくなってしまいます。そこで権利者と社会全体との利益の衡平を図るため,著作権や工業所有権については一定の保護期間(権利の存続期間)を設け,この保護期間が経過すると権利は消滅して公有(public domain)に帰し,爾後その客体である知的財産は誰もが自由に利用しうることとしているのです。以下,著作権の保護期間についてみていきましょう。

著作権は,原則として,著作者の死後50年を経過するまで存続します(著51条2項)。複数の者が創作に関わった共同著作物(ただし,職務著作と映画の著作物については後述。)の場合は,最終に死亡した著作者の死後50年間存続します(同項括弧書)。この原則に対しては,以下に述べるようにいくつかの例外があります。

まず,無名または変名(雅号・筆名・略称など)の著作物の著作権は,その著作物の公表後50年間存続します(著52条1項)。もっとも,著作者の変名が周知のものである場合や,この保護期間内に実名の登録がなされた場合および実名または周知な変名を著作者名と表示して改めて公表した場合は,原則に立ち戻って著作者の死後50年間保護されます(同条2項)。また,職務著作によって法人等の団体が著作の名義を有する著作物については,その保護期間は当該著作物の公表後50年(創作後50年以内に公表されなかったときは創作後50年)となります(著53条1項)。もっとも,実際に創作を行った著作者個人が上記期間内にその著作者名(実名または周知な変名)を表示して改めて公表したときは,原則に戻ることとなります(同条2項)。さらに,映画の著作物の保護期間は,その公表後50年(創作後50年以内に公表されなかったときは創作後50年)となり(著54条1項),爾後当該映画の著作物の利用に関しては,その原著作物の著作権も当該映画の著作物の著作権とともに消滅したものと扱われます(同条2項)。

ところで,上記のうち「公表」がポイントになる場合,例えば刊行が何度にも渡ってなされるものはいつの時点をもって「公表」と考えればいいのかという問題が生じます。この点については,新聞や一話完結シリーズのような継続的刊行物(継続的に公表されるもの)は毎冊・毎号・毎回の公表時により,また百科事典の分冊や連載小説のような逐次刊行物(逐次公表されるもの)は最終部分の公表時によるものとされます(著56条1項)。ただし,後者において,前回公表時から次回公表時までにあまりにも間が空いてしまうと保護期間が不当に長くなってしまいかねませんから,前回公表時から3年を経過した場合はその前回の部分をもって最終部分としていったん区切ることになります(同条2項)。

なお保護期間の「50年」は,著作者の死亡や著作物の公表・創作の日から暦に従って計算するのではなく,これらの日が属する翌年1月1日から起算します。ですから,例えば1999年1月15日に亡くなった著作者の著作物については,2000年1月1日から起算して50年の2049年12月31日の終了をもってその著作権が消滅し,2050年1月1日から自由に利用できることとなるわけです。

著作権の制限(総論)

何度も繰り返すように,著作権法は,著作(権)者等の財産的・精神的な権利利益を保護するとともに,それが社会全体の文化的所産であるという点からその公正な利用に留意しつつ,文化の発展をも目的として定められたものです(著1条参照)。この権利利益の保護と公正な利用の保護という衡平を図るために,著作権法は,利用者側において一定の要件を満たした場合に著作(権)者の権利行使を制限する規定を設けています(著30条以下)。もっとも,この権利制限の規定は著作財産権に係るものであって,これによって著作者人格権が制限されるということはありません(著50条)。

著作権の制限には,大別して個人的目的によるものと公共的目的によるものとがあります。

個人的目的による制限(1) ―私的使用目的の複製―

著作物を,個人的にまたは家庭内その他これに準ずる限られた範囲内において使用することを「私的使用」といいます。ここで「家庭内その他これに準ずる限られた範囲内」というのは,自分自身およびそれと同一の家庭にある者や個人的結合が強い閉鎖的なグループであって,少人数のものが想定されていますが,例えば「何親等までならいい」とか「何人までならいい」というように画一的に定められるものではありません。

上記のような私的使用の目的でその使用をする者が著作物を複製することについては,著作権者(複製権者)の権利行使が原則として制限され,この場合は著作権侵害を構成しないこととなります(著30条1項柱書)。ここにいう「複製」には限定が付されていませんから,原始的な模写であろうとゼロックス・コピーであろうと,はたまたテープやディスクへの録音・録画であろうと,さらには特定の形式にエンコードしてファイルとして保存するのであろうと,私的使用目的であれば著作権者(複製権者)の許諾を得ずに自由になしうるということになります。

ただし,公共目的で設置された自動複製機器を用いて複製する場合(著30条1項1号),および技術的保護手段(コピー・プロテクションや送信に伴うスクランブル処理など)の回避により可能となり,またはその結果に障害が生じないようになった複製を,情を知って行う場合(同2号)は,私的使用目的の複製から除外され,これらの場合の複製については著作権者(複製権者)の許諾が必要とされます(なお,もっぱら文書・図画を複写するいわゆるコピー機は,著附則5条の2によって上記自動複製機器から除かれています。)。

また,デジタル方式よる録音・録画については,私的使用目的の複製に際して,複製を行う者が一定の補償金を支払うべき旨規定されており(著30条2項),実際には,デジタル方式の録音・録画機器(ハードウェア)やこれに供される記録媒体(メディア)の購入時に,これらの商品に上乗せされて上記補償金が支払われる仕組みになっています(著104条の2~104条の11)。

ところで,この私的使用目的複製の規定は,元来は,私的使用目的複製に対して著作権の行使を認めなくても著作権者の経済的利益をそれほど害することはないし,むしろ著作物の個人的利用を自由に行わしめることで文化の発展にも寄与しうるという考えから置かれたものですが,最近では,とりわけプログラムなどデジタル方式で表現される著作物に関しては,この規定の存在自体をも疑問視する声が上がってきています。けだし,情報技術(IT)の発達した今日では,情報を劣化させることなく大量に複製することが容易になっており,こうした技術による個人個人の私的使用目的複製が積み重なることで結局著作権者の経済的利益が損なわれるおそれがあるからです。もっともこの点は立法による解決を待つほかなく,裁判例(東京地判平12・5・16最高裁ウェブページ(平成10年(ワ)第17018号)「スターデジオ100事件」)でもその旨指摘されているところです。





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