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著作権法 (東京情報大学・総合情報学部・情報文化学科)

第7講 著作物の利用

  1. 利用許諾(ライセンス)
  2. 著作権等の集中管理
  3. 裁定・強制許諾制度

利用許諾(ライセンス)

第4講で説明したように著作財産権は原始的には著作者に帰属するものですから,本来ですと著作者のみが,支分権に関する各規定(著21~27条)に定められた態様によってその著作物を利用しうることになります。しかし実際には著作者が自分だけで著作物を利用するということは稀で,むしろ広く一般に利用されることによって著作者自身の利益にもなるのです。他方著作物を利用する側にあっては,私的使用目的や引用など著作権制限規定(著30~47条の2)に掲げられた場合(第5講第6講参照)を除き,他人の創作に係る著作物を利用する際には,利用者において正当な権限がなければいけません(これがない場合は「著作権侵害」ということになります。)。その権限を得るにはどうしたらよいでしょうか。

ひとつには,著作権の全部または一部(支分権)を著作者(著作権者)から譲り受ける(著61条参照)という方法があります。例えばある著作物を複製するに当たって,その著作物の著作(権)者から著作権全部または複製権のみというように,権利そのものの譲渡を受けるのです。そうするとその複製をする者は,自らが著作権者または複製権者としてその著作物を利用することになりますから,何ら憚ることなく著作物を複製しうるというわけです。しかし権利そのものの譲渡となると有償でなされるのが通常で,相当の対価が必要とされるでしょう。

いまひとつは,例えばある演劇を上演することについてその著作権者(または上演権者)から許諾を得,あるいはある小説を映画化する(翻案する)ことについてその著作権者(または翻案権者)から許諾を得るというように,著作物の利用について著作権者から許諾を得るという方法があります。こうした他人の著作物の利用に対して,著作権者はその許諾をすることができるのです(著63条)(この「利用許諾」が一般に「ライセンス(licence)」と称されるものです。)。

利用許諾は,通常は著作権者と利用者との契約によってなされますが,その契約において著作物の利用方法や利用条件(対価の額等)を定めることができます(著63条2項参照)。その条件の中でもとりわけ利用者にとって重要なもののひとつとして,「独占的利用」の特約があげられます。本来「利用許諾」は著作権者(許諾をする者)と利用者(許諾を受ける者)との間の債権的な性質のもので,基本的に対世効を有していません。ですから,例えばある演劇脚本の著作権者 A が B に対して上演を許諾すると同時に,C に対して同様の上演を許諾することも可能で,この場合 B は,C の上演はおろかそれ以外の者による無断上演についても,これを差し止めることはできません。しかし A と B との間の上演に関する「利用許諾」契約において,「A は B 以外の者に同様の許諾をしない」というような特約が含まれていますと A の B に対する利用許諾は「独占的利用許諾」ということになり,B は「独占的な利用をさせる」という自己の(A に対する)債権を保全するために債務者(著作権者)である A に代位して(民423条参照)他人の無断上演を差し止められると解することができます。

ところで,著作権者と利用者との著作物利用に係る契約(合意)は,それが詳細な点まで明示的に書面でなされていればそれほど問題は生じません。しかし,契約を締結するかどうかはともかく,その内容に関する合意は口頭や(場合によっては)黙示的になされることも一般にはままあることで,そのような場合その契約が著作権全部の譲渡か,もしくは一部の譲渡か,または独占的利用許諾か,もしくは通常の利用許諾か,いずれを意味するのか明確でないことが少なくありません。「著作権者 A は単なる利用許諾のつもりであったが利用者 B は支分権の譲渡を受けたと思っていた」ということも起こりうるのです。そのような争いが実際に生じた場合,裁判所は,当事者の意思がいずれにあったかという点とともに,対価(報酬)の額の多寡などの客観的事実をも考慮して判断することになります。

著作権等の集中管理

本来ですと,ある著作物を利用しようとする者に対しては,その著作権者自らが許諾・禁止をし,その対価の請求・受領をしなければなりません。しかし,いつどこで自己の権利の目的たる著作物が利用されるのか常に目を光らせて,ありとあらゆる利用者に対して対価を支払うよう連絡を取ることは著しく困難であるといわざるを得ませんし,他方利用者の側からみても,自分が利用しようとしている著作物の著作権を有しているのが誰なのか,著作物を利用するごとにこれを調べるという手間がかかってしまいます。これを解消するために,個々の著作権者の著作権をある団体が集中的に管理して,著作物の利用者に対してその許諾および対価の請求・受領を行うというシステムが存在します。

このような,著作物,実演,レコード,放送および有線放送の出版,翻訳,興行,放送,映画化,録音・録画等の方法による利用の許諾に関して,信託または取次ぎ・代理によって著作権者または著作隣接権者のためにその著作権等を管理するシステムで,これを業として行うものを「著作権等管理事業」といいます(著管2条1項・2項)。著作権等管理事業を行うには文化庁長官の登録を受けなければなりません(著管3条)が,従来(平成13年10月1日の著作権等管理事業法施行前)の集中管理システムであった著作権仲介業務においては許可が必要とされていたところ(旧仲介業務2条),今回の新システムの導入によって既存の仲介業務団体(著作権等管理事業者)以外の新規参入が容易になりました。著作権等管理事業が適正に運営されるように,登録を受けた著作権等管理事業者には,個々の権利者との間に交わされる契約のベースとなるべき管理委託契約約款(著管11条)や,その管理に係る著作権等についての使用料規程(同13条)を文化庁長官に届け出るべきことが義務づけられています。

平成14年4月1日現在,所定の登録・届出を経て著作権等管理事業を行っている事業者は,社団法人,協同組合,株式会社など12の団体がありますが,これらのうち,特に使用料収受シェアの高い事業者で一定の要件を満たす者については,これを文化庁長官が「指定著作権等管理事業者」に指定することができます(著管23条1項)。 指定著作権等管理事業者は,その指定された利用区分に係る利用者代表から自己の届出に係る使用料規程に関する協議を求められた場合これに応じなければならず(著管23条2項),これにおいて使用料規程を変更する旨の協議が成立した場合はその結果に基づいて文化庁長官に使用料変更の届出を行わなければなりません(同条5項・13条1項)。平成14年4月現在,(社)日本音楽著作権協会(JASRAC),(協)日本脚本家連盟,(協)日本シナリオ作家協会,(社)日本複写権センター,(社)日本レコード協会(RIAJ)および(社)日本芸能実演家団体協議会(芸団協)が指定著作権等管理事業者に指定されています。

なお,これら著作権等管理事業のほかに,私的録音録画補償金制度(著30条2項,第5講参照)に関してはその権利を集中的に管理するシステムが存在し,これを行うための団体を文化庁長官が指定しています(104条の2以下)。現在,私的録音補償金については(社)私的録音補償金管理協会(SARAH)が,そして私的録画補償金については(社)私的録画補償金管理協会(SAVAH)が,それぞれ指定団体として活動しています。

裁定・強制許諾制度

上記のように,他人の著作物を利用しようとする者は,直接著作権者(もしくはその利用態様に係る支分権を有する者)から,または集中管理団体を通じて利用許諾を得なければならないのですが,一定の限られた場合においては,権利者からの利用許諾を得られなくとも文化庁長官の裁定を受けることによって,一定の補償金を供託して著作物を利用することができます(これを「強制許諾」といいます。)。強制許諾が認められるのは,以下の場合です。

著作権者不明等の場合

公表された著作物または相当期間に渡って公衆に提供・提示されている事実が明らかである著作物について,その著作権者が不明であるなどの理由で相当な努力を払っても著作権者と連絡を取ることができない場合は,強制許諾によって利用することができます(著67条1項)。なお,この強制許諾によって作成した複製物には,裁定に係る旨と裁定の年月日を表示しなければなりません(同条2項)。

著作物を放送する場合

公表された著作物を放送事業者が放送しようとしてその著作権者に許諾の協議を求めたところ,その協議が成立せず,または協議をすることができなかった場合には,強制許諾によってこれを放送することができます(著68条1項)。これは放送が高い公共性を有していることに鑑みて設けられた規定です。なお,強制許諾によって放送する著作物は,これを有線放送し,または受信装置を用いて公に伝達することができますが,その場合にはこれらを行う者がさらに補償金を著作権者に支払う必要があります(同条2項)。

著作物を録音する場合

最初に国内で販売されてその後3年を経過した商業用レコード(市販の目的をもって製作されるレコードの複製物。著2条1項7号)に著作権者許諾のもとに録音されている音楽著作物を,別の商業用レコード製作のために録音しようとして著作権者に許諾の協議を求めたところ,その協議が成立せず,または協議をすることができなかった場合には,強制許諾によってこれを録音し,またはレコードの譲渡によって公衆へ提供することができます(著69条)。わが国の音楽業界では,作詞家・作曲家と特定のレコード会社との間で,その創作に係る楽曲を当該レコード会社以外に録音しない旨の専属契約を結んでいることがしばしばありますが,これを制限して音楽の流通を促進しようというのがこの強制許諾規定の目的です。

もっとも,以上のような場合でも必ず強制許諾がなされるわけではありません。著作者(注:著作権者ではない)がその著作物の出版等による利用を廃絶しようとしていることが明らかである場合や,著作権者が放送を不許諾とすることにつきやむを得ない事情がある場合には,裁定がなされず,その利用者において利用することができないことになります(著70条4項)。





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