www.sekidou.com

著作権法 (東京情報大学・総合情報学部・情報文化学科)

第8講 出版権・著作隣接権

  1. 著作権に関連する権利
  2. 出版権
  3. 著作隣接権

著作権に関連する権利

出版,実演,レコード,放送,有線放送といった手段によって著作物を広く一般公衆に伝達する者は,著作権との関連は大きいのですが自ら精神的創作はなさないゆえ著作者であるとはいえず,したがって著作権の主体とはなり得ません。しかし,こうした伝達者にも著作者に準ずる精神的活動が存し,あるいは経済的投資をしているのが通常で,これらの者の経済的利益の保護を図る必要があります。そこで,これらの者の利益を保護することを目的として創設されたのが「著作隣接権」という権利で,わが国の著作権法は,実演,レコード,放送および有線放送をその保護対象としています(著89条・90条)。なお前述のように,著作物の伝達手段には出版も含まれますが,出版に関する権利については,著作権法制がもともと海賊版から出版者を保護したことに端を発するという沿革(第02講参照)もあって,これを著作隣接権とは別に「出版権」として保護しています(著79条以下)。

なお,アメリカ合衆国の著作権法制では著作隣接権という概念そのものがなく,同国の連邦著作権法ではレコードが著作物と定義され(米国著作権法102条(a)(7)),ゆえにレコード製作者は著作隣接権者ではなく著作者として保護されており(実演家,放送事業者および有線放送事業者は著作権法による保護を受けていません。),このことが近時著作権の国際的保護に摩擦を生じる一因ともなっています。

出版権

一般に「出版」とは,著作物(その他の情報)を文書・図画として複製してその複製物を頒布することをいいます。ゆえに他人の著作権の目的である著作物を出版によって利用するには,著作権もしくは複製権の譲渡を受けるか,または複製(出版)について利用許諾を得なければなりません(第07講参照)が,いまひとつ「出版権」(著79条以下)の設定を受けることによってもこれが可能となります。

「出版権」は,頒布の目的をもって著作物を印刷等の方法により文書・図画として複製することを内容とする(著80条1項)独占的な権利ですから,これが設定されると,出版権者以外の者(著作者・著作権者を含めて)が当該著作物を出版によって利用するには出版権者の許諾を得なければならなくなりますし,当該著作物の無断出版行為に対しては出版権者自らが差止請求権を行使することができます(著112条)。

複製物(出版物)の発行部数や対価(報酬)の額など,出版権の具体的内容は設定行為,すなわち出版権者と出版権設定者(複製権者)との出版権設定契約によりますが,出版権者が複製権者に対して負う義務や出版権の存続期間といった重要な事項に関しては著作権法にも規定があり(著81条・83条等),契約においてこれらの定めがない場合は上記規定によることとなります。

なお出版権も著作財産権と同様,一定の利用については権利が制限されます(著86条)。

著作隣接権

実演家の権利

著作物を,演劇的に演じ,舞い,演奏し,歌い,口演し,朗読し,またはその他の方法により演ずることを「実演」といいます(著2条1項3号)。また,これらに類する行為で,著作物を演じるのではなくとも芸能的な性質を有するもの(手品などがその例)も,わが国の著作権法上は「実演」として保護されます。実演家(俳優,舞踏家,演奏家,歌手その他実演を行う者および実演を指揮・演出する者。著2条1項4号)の具体的な権利は以下のとおりです。

氏名表示権

実演家人格権の一つで,平成14年改正により新たに設けられたものです。これにより実演家は,実演の公衆への提供・提示に際して自己の氏名(または芸名その他氏名に代えて用いられるもの)を実演家名として表示するか否かを決することができます(著90条の2第1項)。一定の場合の利用において氏名表示を省略できる点は著作者の氏名表示権(著19条3項参照)と同様ですが,実演家の氏名表示権にあっては著作者のそれよりもやや広く省略が認められていることに留意しなければなりません(著90条の2第3項)。

同一性保持権

やはり平成14年改正で設けられた実演家人格権の一つです。これにより実演家は,自己の名誉・声望を害するような実演の変更,切除その他の改変を禁じることができます(著90条の3第1項)。もっとも,実演の性質ならびにその利用の目的および態様に照らしてやむを得ないと認められる改変や,公正な慣行に反しないと認められる改変に対しては,この権利は働きません(同2項)。この権利は,著作者がその著作物に対して有する同一性保持権(著20条参照)に似ていますが,要件が客観的なものに限られている点と適用除外が著作者のそれよりやや広い点が異なります。

なお,以上の実演家人格権は実演家の一身専属権で譲渡することができません(著101条の2)が,その実演家の死後においてもこれらの権利の侵害となるべき行為は許されず(著101条の3),その場合は実演家の一定の遺族が差し止め(著112条)や名誉回復等措置(著115条)を求めることができます(著116条)。

録音権・録画権

実演を録音・録画することを内容とします(著91条1項)。これにより実演家は,その実演を録音・録画して利用するレコード製作者やビデオ製作者のみならず,さらにレコード(CD)やビデオを(私的使用目的以外で)利用するエンド・ユーザーに対しても権利を行使できます。ただし,映画の場合は例外があり,いったん映画に出演することを契約して当該映画において実際に実演した場合には,その実演家は上記の権利を有しないこととなります(著91条2項)。これは出演契約時の一回しか許諾する機会がないことを意味しており,一般に「ワン・チャンス主義」と呼ばれます。なお,このワン・チャンス主義にもさらに例外があり,映画のサウンド・トラックの場合には原則に戻って録音権が働きます(著91条2項)。

放送権・有線放送権

実演を放送・有線放送することを内容とします(著92条1項)。ただし,有線放送による同時再送信や適法な録音・録画等による放送・有線放送にはこの権利が働きません(著92条2項)から,結局実演家の放送権・有線放送権が及ぶのは,(1)生実演を直接放送・有線放送する場合,(2)生実演の放送・有線放送を受けて再放送を行う場合,(3)実演の無許諾録音・録画物を用いて放送・有線放送を行う場合に限られることとなります。また,放送に関しては,実演の放送権を有する者が当初の放送を許諾したときは,ネットワーク系列下における放送のすべてについて許諾があったものと扱われ,その場合には報酬請求権のみを有することとなります(著94条)。

送信可能化権

実演を送信可能化することを内容とします(著92条の2第1項)。ただし,実演の録音・録画権者の許諾を得て録画されている場合および実演家の許諾を得て実演が映画に収録されている(サウンドトラックのような聴覚的録音物以外の録音・録画物に収録されるもの)場合には,実演家の送信可能化権は及びません(著92条の2第2項)。

譲渡権

実演をその録音物または録画物の譲渡によって公衆に提供することを内容とします(著95条の2第1項)。これにより実演家は,自らの実演を録音・録画した物が他人に譲渡されることについて,直接権利を行使することができます。実演の録音・録画権者の許諾を得て録画されている場合および実演家の許諾を得て実演が映画に収録されている(聴覚的録音物以外の録音・録画物に収録されるもの)場合に実演家の譲渡権が及ばない点は,送信可能化権におけると同様です(著95条の2第2項)。したがって,実演家の譲渡権が及ぶのは実演家自らが製作した録音・録画物を譲渡する場合や無許諾録音・録画物が譲渡される場合などに限られます。また,実演に関する譲渡権の対象となる録音・録画物が,譲渡権者またはその許諾を得た者によって公衆に譲渡された場合(著95条の2第3項1号),譲渡権者またはその承諾を得た者によって特定少数の者に譲渡された場合(同2号)および国外において適法に公衆への譲渡が行われた場合(同3号)には,権利が消尽しこれを行使することはできません(ファースト・セール・ドクトリン)。なお,譲渡権の制限および善意者の特例については,著作権の支分権たる譲渡権におけるのと同様です(著102条による著47条の3の準用)。

貸与権

実演をそれが録音されている商業用レコードの貸与により公衆に提供することを内容とします(著95条の3第1項)。ただし,この許諾権としての貸与権は1カ月以上12カ月未満の範囲内で政令により定められる一定期間に限られており(著95条の3第2項),この期間が経過したあとは「貸与報酬請求権」(後述)を行使しうることとなります。

二次使用料請求権

実演について録音権を有する者の許諾を得て実演が録音されている商業用レコードを用いて放送・有線放送を行った放送事業者・有線放送事業者に対して,当該実演を行った実演家が二次使用料を請求することを内容とする報酬請求権です(著95条1項)。この二次使用料請求権の国際的保護に関しては相互主義が採られています(第11講参照)。

貸与報酬請求権

実演が録音されている一定期間経過後の商業用レコードを貸与することによって公衆に提供する貸しレコード業者に対してその報酬を請求することを内容とします(著95条の3第3項)。許諾権としての「貸与権」(前述)とこの「貸与報酬請求権」とによって,商業用レコードの貸与(レンタル)について実演家は,一定期間(最初の1年)これを禁止することができますが,その期間を経過した後(あとの49年)は禁止することができなくなって貸与の対価(報酬)を請求しうるにとどまることになります。なお,上記の二次使用料請求権ならびに貸与権に係る使用料請求権および貸与報酬請求権は,指定管理団体のみによって行使することができます(第7講参照)。

レコード製作者の権利

「レコード」とは,蓄音機用音盤,録音テープその他の物に音を固定したもの(音をもっぱら影像とともに再生することを目的とするものを除く。)をいい(著2条1項5号),したがって,古くは蝋管レコードやSP盤から,今日一般にいわゆるLP盤,EP盤のような塩化ビニール製のレコードはもちろん,コンパクト・ディスク(CD),ミニ・ディスク(MD),録音されたカセット・テープ,デジタル・オーディオ・テープ(DAT),CD-Rなどがこれに含まれます。ただし,上記条文の括弧書にもあるように視聴覚的固定物はこれに含まれていませんから,音声とともに影像も記録されているビデオ・テープや DVD(デジタル・バーサティル・ディスク)などは「レコード」ではありません。レコード製作者(レコードに録音されている音を最初に固定した者。著2条1項6号)の具体的権利は以下のとおりです。

複製権

レコードを複製することを内容とします(著96条)。

送信可能化権

レコードに録音されている音声を送信可能化することを内容とします(著96条の2)。

譲渡権

レコードの複製物を譲渡することによってレコードを公衆に提供することを内容とします(著97条の2第1項)。この権利に基づいて,レコード製作者は,たとえばレコード製作者に無断で製作されたレコードの複製物が譲渡されることに対して,直接権利を行使することができます。レコードに関する譲渡権の対象となるレコードの複製物が,譲渡権者またはその許諾を得た者によって公衆に譲渡された場合(著97条の2第2項1号),譲渡権者またはその承諾を得た者によって特定少数の者に譲渡された場合(同2号)および国外において適法に公衆への譲渡が行われた場合(同3号)には権利が消尽する点,ならびに譲渡権の制限および善意者の特例がある点は実演家の譲渡権におけるのと同様です(著102条による著47条の3の準用)。

貸与権

商業用レコードの貸与により公衆に提供することを内容とします(著97条の3第1項)。レコード製作者は,これに基づいて,自己の商業用レコードがレンタルされることについて権利を行使する,すなわち,レンタルを許諾・禁止し,またはこれについて報酬を受けることができます。ただし,この許諾権としての貸与権は1カ月以上12カ月未満の範囲内で政令により定められる一定期間に限られており(著97条の3第2項),この期間が経過したあとは貸与報酬請求権(後述)が行使しうることとなります。

二次使用料請求権

当該レコード製作者のレコードに係る商業用レコードを用いて放送・有線放送を行った放送事業者・有線放送事業者に対して二次使用料を請求しうる報酬請求権です(著97条1項)。レコードを用いた放送・有線放送につき許諾権としての放送権・有線放送権を有する実演家と異なり,レコード製作者は自己のレコードに係る放送・有線放送に関する許諾権を有しませんから,この二次使用料請求権がとりわけ重要となります。なお,この二次使用料請求権の国際的保護に関しては,実演家におけるのと同様,相互主義が採られています(第11講参照)。

貸与報酬請求権

一定期間経過後の商業用レコードを貸与することによって公衆に提供する貸しレコード業者に対してその報酬を請求しうる報酬請求権です(著97条の3第3項)。現在,わが国では関係団体の協議により,発売後1カ月を経過した商業用レコードについては許諾権としての貸与権を行使しないこととされていますが,外国のレコード製作者の中には12カ月いっぱいこれを行使している者もあります。なお,上記の二次使用料請求権ならびに貸与権に係る使用料請求権および貸与報酬請求権は,指定管理団体のみによって行使することができます(第7講参照)。

放送事業者および有線放送事業者の権利

公衆によって同一の内容の送信が同時に受信されることを目的として行われる無線通信の送信を「放送」,同じく有線電気通信の送信を「有線放送」といい(著2条1項8号・同項9号の2),放送・有線放送を業として行う者をそれぞれ「放送事業者」「有線放送事業者」といいます(著2条1項9号・同項9号の3)。放送事業者・有線放送事業者の具体的な権利は以下のとおりです。

複製権

放送(またはこれを受信して行う有線放送)・有線放送を受信して,その放送・有線放送に係る音または影像を録音・録画し,または写真その他これに類似する方法により複製することを内容とします(著98条・100条の2)。したがって,たとえば一般の視聴者が放送や有線放送を録画したりその影像を写真で撮影することには,私的使用目的の場合(著30条1項)を除き,放送事業者・有線放送事業者の複製権が働きます。

再放送権・有線放送権(放送事業者),放送権・再有線放送権(有線放送事業者)

放送・有線放送を受信してさらに放送し,または有線放送することを内容とします(著99条1項・100条の3)。例えば,海賊放送局が他の放送事業者・有線放送事業者の放送・有線放送を受信してさらにこれを放送・有線放送する場合にこれらの権利が働きます。なお,放送難視聴区域においては有線テレビジョン放送事業者にその区域内での全テレビジョン放送を受信して再送信することが義務づけてられていますから,これについては放送事業者の有線放送権は及びません(著99条2項,有線テレビジョン放送法13条1項)。

送信可能化権

放送(またはこれを受信して行う有線放送)・有線放送を受信して,これらを送信可能化することを内容とします(著99条の2・100条の4)。これは平成14年改正で設けられた権利で,例えば,受信した放送・有線放送をそのままインターネットを介してストリーミングで配信(送信)する行為は,当該放送事業者・有線放送事業者の送信可能化権を侵害することになります。なお,受信した放送・有線放送をいったん録音・録画してインタラクティヴ送信することに対しては,当該録音・録画物について前述の複製権が働きますから,この送信可能化権によるまでもありません。

テレビジョン放送の伝達権・有線テレビジョン放送の伝達権

テレビジョン放送(またはこれを受信して行う有線放送)や有線テレビジョン放送を受信して,影像を拡大する特別の装置を用いてその放送・有線放送を公衆に伝達することを内容とします(著100条・100条の5)。例えば,歓楽街のビルの壁面などに設けられた大きなディスプレイ(ビデオ・プロジェクター)を通して放送・有線放送を公衆に伝達することについては,放送事業者・有線放送事業者の権利が働きます。なお,放送・有線放送される著作物に関しては,非営利目的で聴衆又は観衆から料金を受けない場合には許諾なくして受信装置を用いて公に伝達しうる旨の著作権の制限規定(著38条3項)がありますが,後掲の著作隣接権の制限に関しては同項の規定が準用されていません(著102条1項)ので,非営利かつ無償の伝達の場合でも放送事業者・有線放送事業者のテレビジョン放送の伝達権・有線テレビジョン放送の伝達権は及ぶという点に注意が必要です。

以上の著作隣接権(報酬請求権を含む。)は,それぞれ目的となる実演が行われた時,レコードに音が最初に固定された時,放送・有線放送が行われた時に発生し,それぞれ目的となる実演が行われた日,レコードが発行(著4条の2)された日(音が最初に固定された日の属する年の翌年から50年までに発行されなかったときは音が最初に固定された日),放送・有線放送が行われた日の属する年の翌年から起算して50年間存続します(著101条)。従前は,レコードの保護期間の終期の起算点は,その発行に関わらず「音を最初に固定した」日の属する年の翌年としていましたが,平成14年改正によりこれを変更しました。すなわち,複数の未発行原盤を用いた一つのレコードが発行(発売)された場合においては,いずれの原盤についても保護期間の終期が同じということになります。

なお著作隣接権も著作財産権と同様,一定の利用については権利が制限されます(著102条)。





2,529,918

http://www.sekidou.com/
制作者に連絡する