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著作権法 (東京情報大学・総合情報学部・情報文化学科)

第9講 著作権等の侵害

  1. 著作権等の侵害
  2. 民事上の責任
  3. 刑事上の責任

著作権等の侵害

第04講および第08講でみてきたように,著作物を改変したり,複製したり,あるいは実演を録音・録画したりといった行為は本来それぞれの権利者(著作者,著作権者,出版権者および著作隣接権者)のみがなしうるのですから,権利者以外の者が無断でこれらの行為をなすことは,権利制限規定(著30条以下・86条・102条)に該当する場合を除き,これら権利者の権利を侵害するということになります。

しかし,このような各法条に正面から抵触する行為のみを侵害としたのでは著作権等の法的保護として不十分であろうとの考えから,著作権法では,ストレートな侵害行為以外の一定の行為をも侵害とみなすことによって,十全な保護を図っています(著113条)。すなわち,(1)著作権等侵害行為によって作成された物の頒布目的輸入およびその知情頒布・頒布目的所持(著113条1項),(2)著作権侵害行為によって作成されたプログラム著作物の業務上の使用(使用権限取得時知情に限る。)(同条2項),(3)権利管理情報の操作,その複製物の知情頒布・頒布目的輸入・頒布目的所持およびその知情公衆送信・送信可能化(同条3項),ならびに(4)著作者の名誉・声望を害する方法による著作物の利用(同条5項)といった行為が「みなし侵害」とされるのです。

以上のような著作権等の侵害に対してその責任を追及することこそが,まさに著作権法制の本質であるといえるでしょう。では具体的にどのような法的責任を問えるのか(権利者はどのような法的救済を享受できるのか),民事・刑事の両面からみていきましょう。

民事上の責任

民事上の法的救済で最も重要なのが「差止請求権」です。すなわち著作権者等は,その著作権等を侵害する者または侵害するおそれがある者に対して,その侵害の停止または予防を請求することができるほか,これに加えて,侵害行為を組成した物,侵害行為によって作成された物またはもっぱら侵害行為に供された機械・器具の廃棄等,侵害の停止・予防に必要な措置をも請求することができます(著112条)。

また,著作権,著作者人格権,出版権および著作隣接権も私権のひとつですから,これらが侵害された場合は民法上の「不法行為」として論ずることができ,したがって自己の著作権等を侵害された権利者は,その侵害者に対して損害賠償責任を追及しうることになります(民709条)。しかしながら著作権等の侵害において,権利者がどれだけ損害を被ったのか自ら立証することは容易ではありません。そこで著作権法は,損害額の推定規定を設けることによってその挙証責任を加害者側に転換しています。すなわち,(1)加害者がその侵害行為により受けている利益の額,または(2)著作権・著作隣接権の行使につき権利者が受けるべき金銭相当額が,それぞれ損害額と推定されます(著114条)。さらに,ディスカバリー(書類提出命令)(著114条の2)や鑑定人への説明義務(著114条の3)を認めているほか,それでも損害額の立証が困難な場合には裁判所が相当な損害額を認定できるよう(著114条の4),民事手続法(民事訴訟法)上の特別規定が設けられています。

さらに著作者人格権については,その著作者(著作者の死後は一定の遺族)が損害賠償(慰謝料)以外に名誉回復等措置を講じることも可能です。すなわち,著作者はその著作者人格権の侵害者に対して,改変した著作物の訂正をさせるなど,著作者の名誉・声望を回復するために適当な措置を請求することができるのです(著115条)。この名誉回復等措置は,新聞等への謝罪広告の掲載によってなされるのが通常です。

なお,民事上の責任に関して一般の不法行為では加害者の故意・過失が要求されますが,上記のうち差止請求権は,侵害者の故意・過失がなくともこれを行使できます。

刑事上の責任

人の知的活動の所産である知的財産に係る権利が他人によって侵害されることは,公共的見地からも決して望ましいことではありません。けだし,知的所有権の侵害が横行して本来なら自分の知的財産から得られるはずの利益が失われてしまうと,人々の知的活動に対するインセンティヴが減退し,ひいては社会全体の文化・産業の発展も損なわれてしまいかねないからです。そこで,著作権法をはじめとする知的所有権各法は刑罰規定を設けて,知的所有権の侵害行為を犯罪としてこれに刑罰を科すこととしています。もっとも,刑事上の責任には原則として「故意(犯意)」が要求されますから,過失による著作権等の侵害行為は罰せられません(刑38条参照。ただし単なる法律の不知は故意を阻却しません。)。以下,著作権法の条文に従って,罪となるべき侵害行為とそれに科せられる刑罰をみていきましょう。

3年以下の懲役または300万円以下の罰金 (119条)
  1. 著作者人格権,著作権,出版権,実演家人格権または著作隣接権を侵害する行為(私的使用目的複製を自ら行うことおよび権利管理情報に関するみなし侵害行為を除く。)
  2. 営利目的で自動複製機器(著30条1項1号)を複製(侵害行為となるもの)に使用させる行為
300万円以下の罰金 (120条)
  • 著作者死亡後においてその著作者が生存していたとしたならばその著作者人格権侵害となるべき行為
1年以下の懲役または100万円以下の罰金 (120条の2)
  1. 技術的保護手段を回避する機器または技術的保護手段を回避するプログラムの公衆への提供行為(複製物による譲渡,貸与,譲渡・貸与目的の製造・輸入・所持,公衆送信・送信可能化等をすること)
  2. 業として公衆からの求めに応じて技術的保護手段を回避する行為
  3. 営利目的で権利管理情報の操作等をするみなし侵害行為
1年以下の懲役または100万円以下の罰金 (121条)
  • 虚偽の著作者名を表示した著作物の複製物を頒布する行為(二次的著作物において虚偽の原著作者名を表示することを含む。)
1年以下の懲役または100万円以下の罰金 (121条の2)
  • 外国原盤商業用レコードを無断複製し,その複製物を頒布し,または複製物を頒布目的で所持する行為

    ここで保護される外国原盤商業用レコードは,(1)国内の商業用レコード製造業者(リプレッサー)が外国(条約加盟国かどうかは問わない。)のレコード製作者から原盤提供を受けて製作したもの,および(2)外国のリプレッサーが各条約加盟国のレコード製作者から原盤提供を受けて製作したものの2種類です。なお,著作権法8条によって保護されるレコードの無断複製は著作隣接権侵害に当たり,119条1項の問題として処理されます。

30万円以下の罰金 (122条)
  • 権利制限規定に該当する場合(引用等)における出所明示義務違反行為

これらのうち119条,120条の2第3号および121条の2の罪は親告罪で,被害者等一定の者からの告訴がなければ公訴を提起することができません(著123条)。また,法人(法人格のないものも含む。)ないし人の従業員等が当該法人等の業務において上記著作権法違反行為を行った場合には,当該法人等にも罰金が科せられるという両罰規定が設けられています(著124条)。





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