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著作権法 (東京情報大学・総合情報学部・情報文化学科)

第12講 サイバー・スペースにおける著作権問題 (仮資料)

  1. サイバー・スペースでの法的問題
  2. プロバイダ責任の制限
  3. P2P技術と著作権

サイバー・スペースでの法的問題

特に,誰が権利利益を侵害しているのかという責任主体の問題が大きい。

プロバイダ責任の制限

サイバー・スペースでは,他人の声望名誉,プライバシーあるいは著作権などの権利利益の侵害となるべき情報が行き交うこともしばしばですが,このような情報の流通経路にあって当該情報を蓄積・配信(オンデマンドのそれを含む。)する設備を管理・運営する者がいかなる責任を負うべきかという問題が生じます。

特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律(平成13年法律137号)

  1. “特定電気通信役務提供者”の定義プロバイダ責任2条1~3号)
    公衆の用に供されるウェブ・サーバ,FTP サーバ,ニュース・グループ・サーバなどを運営・管理するプロバイダ(ISP)や団体(企業はもとより,地方自治体や大学等も含む。)はもちろん,第三者による書き込みを許容する BBS やフォーラム(電子会議室)をウェブ等において設置・運営してこれを広く公衆に提供している個人・団体をも含む。
  2. 情報の流通による権利侵害の被害者に対する免責要件プロバイダ責任3条1項)
    1. 権利侵害情報の不特定の者に対する送信を防止する措置を講ずることが不可能であり,かつ
    2. (1)情報の流通によって他人の権利が侵害されていることを知らないか,または(2)情報の流通を知りつつもそれによって他人の権利が侵害されていることを知ることができたと認められる相当の理由がないとき
  3. 情報の発信者に対する免責要件プロバイダ責任3条2項)
    1. 情報送信防止措置が必要な限度において行われたものであり,かつ
    2. (1)情報の流通によって他人の権利が不当に侵害されていると信じるに足りる相当の理由があるか,または(2)被害者からの申出を受けて特定電気通信役務提供者が情報送信防止措置を講ずることに同意するかどうか発信者に照会した場合において,当該照会を受けた日から7日を経過しても発信者が同意しない旨の申出をしないとき
  4. 被害者の発信者情報開示請求権プロバイダ責任4条)

P2P技術と著作権

ナップスター事件(米国)

参考: フェア・ユースの法理 → 第6講

ナップスター事件に関する一連の裁判

  1. A&M Records, Inc. v. Napster, Inc., 2000 U.S. Dist. LEXIS 6243, 54 U.S.P.Q. 2d 1746 (N.D.Cal. 2000)
    2000/06/30 被告勝訴の略式判決(summary judgement)の否定
  2. A&M Records, Inc. v. Napster, Inc., 114 F.Supp. 2d 896 (N.D.Cal. 2000)
    2000/07/26 カリフォルニア北部地区連邦地裁の仮処分差止命令
  3. A&M Records, Inc. v. Napster, Inc., 239 F. 3d 1004 (9th Cir. 2001)
    2001/02/12 (rev. 04/03) 第9巡回区連邦控裁による差戻し
  4. A&M Records, Inc. v. Napster, Inc., 2001 U.S. Dist. LEXIS 2186 (N.D.Cal. 2001)
    2001/03/05 差戻し後に連邦地裁によって修正された仮処分差止命令

上記 4. の仮処分差止命令の主な内容

  1. レコード会社が,ナップスター社に対して,(A)レコード名(作品タイトル),(B)アーティスト名,(C)ナップスター・システム上で利用可能なファイル名,および (D)被侵害権利の証明,の各情報を提供し,これによって著作権法上保護されるレコードを通知した場合,ナップスター社は,これを複製,ダウンロード,アップロード,送信もしくは頒布し,または他人をしてこれらをさせてはならない。
  2. 両当事者はいずれも,レコード名,ファイル名またはアーティスト名について使用されうるスペルのバリエーションを特定する合理的な手段を講じなければならない。
  3. レコード会社からレコードのリストを提供された場合,ナップスター社がそのシステム上で利用可能なファイルを同リストに照らして検索することで,ナップスター社に(侵害についての)「合理的な認識」が生じるものとみなす。
  4. 特定のファイルについて「合理的な認識」が生じた場合,ナップスター社は,3営業日以内に,そのシステムのインデックスからこれを排除し,または事前に排除するよう積極的に監視しなければならない。
  5. レコード会社が,侵害の蓋然性が高いレコード(アーティスト)について,レコードの発売前にナップスター社にその情報を通知した場合,ナップスター社は事前に侵害ファイルをそのシステムから排除しなければならない。
  6. レコード会社からの上記各通知が到達してから5営業日以内に,ナップスター社は,この命令を遵守するために講じた手段を特定したレポートを,レコード会社と裁判所に提出しなければならない。

結局,ナップスター社は上記の命令を遵守することができなかったため,そのシステムの運用を停止した。
 

ファイル・ローグ事件(日本)

債務者: 有限会社日本エム・エム・オー(MMO)

  1. 東京地決平14・4・9(平14年(ヨ)22011号) レコード会社19社を債権者とする仮処分の申立て
  2. 東京地決平14・4・11(平14年(ヨ)22010号) JASRACを債権者とする仮処分の申立て

    ※ 債権者らはいずれも,自己の権利に係る楽曲(著作物・レコード)につき,ファイルローグ・サービスにおいて MP3形式によって複製された電子ファイルを送受信の対象としないよう求めた。

仮処分決定要旨(対 JASRAC 事件)

  1. 本件サービスの利用者が,債権者の許諾を得ることなく,本件各MP3ファイルをパソコンの共有フォルダに置いて債務者サーバに接続すれば,本件各管理著作物について,著作権侵害(複製権侵害またはそのみなし侵害のいずれか,ならびに自動公衆送信権侵害および送信可能化権侵害)を構成する。
  2. (自らはMP3ファイルを接続させていない)債務者の行為が,債権者の送信可能化権および自動公衆送信権を侵害するかどうかは,(1)債務者の行為の内容・性質,(2)利用者のする送信可能化状態に対する債務者の管理・支配の程度,(3)本件行為によって生ずる債務者の利益の状況等を総合斟酌して判断すべきである。……〔認定事実〕から,債務者は,本件各管理著作物の自動公衆送信権および送信可能化権を侵害していると解するのが相当である。
  3. 〔保全の必要性を認定〕
  4. 債務者サーバは,利用者の共有フォルダに蔵置された本件各MP3ファイル自体については,送受信の対象としていないのであるから,いかなる内容のMP3ファイルが利用者間で送受信されているのかを判別することはできず,本件各MP3ファイル自体の送信または受信の差止めを認めるのでは,本件申立ての目的を達成できないことになる。……他方,仮に,利用者(送信者)が本件各MP3ファイルを自己のパソコンの共有フォルダ内に蔵置したとしても,債務者サーバがそのファイル名等についてのファイル情報を,他の利用者(受信者)に送信することを差し止めれば,受信者は受信を希望するMP3ファイルを選択することができなくなる結果,送信者の行う送信可能化および自動公衆送信を阻止することができるといえる。そこで,債務者サーバにおいて,利用者に対するファイル情報の送信行為を差し止めることによって,債権者の本件申立ての目的は達成されると解される。

上記仮処分決定主文の趣旨

(債権者の担保を条件として,)債務者は,債務者が「ファイルローグ(File Rogue)」という名称で運営する電子ファイル交換サービスにおいて,MP3形式によって複製され,かつ,送信可能化の状態にされた電子ファイルの存在及び内容等を示す,利用者のためのファイル情報のうち,ファイル名及びフォルダ名のいずれかに申立てに係る楽曲(レコード)の曲名及びアーティスト名の文字の双方が記載されたファイル情報を,利用者に送信してはならない。

上記決定のとおりシステムを運用することは困難で,結局 MMO はそのシステムの運用を停止した。
 





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