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判例紹介

「インテリア備品設計図」事件


事実の概要

原告

X は建築物の内部の設備,造作,備品等のデザインを行うインテリア・デザイナー(インナー・アーキテクト)であり,訴外 A の依頼に応じインテリア備品の設計図 21枚(以下,本件設計図)を制作した。

被告

Y は A と競争関係にあり,昭和 62年ころから,A 商品と同様のインテリア備品(以下,Y商品)を製造・販売している。

原告の請求

Y商品の製造販売の差止,謝罪広告,損害賠償

(a) 本件設計図は,一定のコンセプトに基づき著作されたもので,独創性を見出すことができ,著作権法で保護されるべき著作物である。Y は,本件設計図に関する複製権または変形権,利用許諾権ならびに著作者人格権(同一性保持権)を侵害した。

(b) Y は,X のインナー・アーキテクトとしての名誉を侵害した。

(c) かりに本件設計図が著作物でないとしても,X は本件設計図の所有者としてこれについての利用許諾権を有するところ,Y の Y商品製造販売行為はこの利用許諾権を侵害するものである。

判旨(請求棄却)

本件設計図の著作物性について (請求(a))

「本件設計図は,……通常の製図法によって表現したものである。工業製品の設計図は,そのための基本的訓練を受けた者であれば,だれでも理解できる共通のルールに従って表現されているのが通常であり,その表現方法そのものに独創性を見出す余地はなく,本件設計図もそのような通常の設計図であり,その表現方法に独創性,創作性は認められない。」

人格権侵害に基づく請求について (請求(b))

「〔請求(b)〕 の事実を認めるに足りる証拠はない。」

所有権に基づく差止請求について (請求(c))

「有体動産である本件設計図に対する所有権は,その有体物の排他的支配にとどまるのであり,仮に,Y が何らかの機会に本件設計図に接して本件設計図の表現を知り,本件設計図に表現されたところから認識できるデザインと同一又は酷似した商品を製造,販売したとしても,その行為は,本件設計図の所有権を侵害するものではない。」

コメント

設計図の著作物性に関しては,表現内容に創作性を認めて当該設計図を「機械工学上の技術思想を創作的に表現した学術的な性質を有する図面たる著作物にあたる」とした,いわゆる機械設計図事件(大阪地判平4・4・30知的裁集 24巻 1号 292頁)がある。本判決は,本件設計図が「通常の製図法」によるものであることを認定して,これに独創性・創作性はないとしている。技術的思想を表した工作機械とデザイン思想を表現した工業製品との違いこそあるが,設計図の著作物性を判断した一事例として,これを考察するうえで参考になるだろう。

―「コピライト」 438号 ―1997年 9月― 掲載




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