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Terms in Law

法のことば Part 3


国家公務員法 (任免の根本基準)

第33条 1) すべて職員の任用は、この法律及び人事院規則の定めるところにより、その者の受験成績、勤務成績又はその他の能力の実証に基づいて、これを行う。

2)~4) 〔略〕

職業安定法 (法律の目的)

第1条 この法律は、雇用対策法…〔中略〕…と相まつて、公共に奉仕する公共職業安定所その他の職業安定機関が、…〔中略〕…各人に、その有する能力に適当な職業に就く機会を与えることによつて、工業その他の産業に必要な労働力を充足し、以て職業の安定を図るとともに、経済の興隆に寄与することを目的とする。

上記のように,法令において“能力”という言葉が一般と同じように使われている場合ももちろんあるのですが,法律上は,一定の事柄についての人の資格を“能力(Fähigkeit)”といいます。すなわち――

権利能力Rechtsfäigkeit
権利の主体となることができる資格。権利能力を有するのは自然人と法人で,自然人はすべて出生と同時に権利を享有し(民1条の3) ――ただし外国人のように特定の権利の享有を制限される者もある(同2条)――,法人は法律が自然人以外に権利主体であることを認めたものであるから当然に権利能力を有する。
意思能力Willensfähigkeit
自分の行為の性質を判断することができる精神的能力。意思能力の有無は行為ごとに個別に判断されるが,だいたい10歳未満の幼児やこれ以下の知能しか持たない精神障害者,泥酔している者などは意思能力がなく(意思無能力者),その者のした法律行為は無効である。
行為能力GeschäftsfähigkeitHandlungsfähigkeit
契約などの法律行為を単独で完全にすることができる資格。意思無能力者の行為は無効としてその保護が図られているが,法律(民法)は,意思能力の有無に関わらず,独立して取引をする能力が不充分な者(未成年者,成年被後見人,被保佐人,被補助人)について,これらを定型的に行為能力が制限された者(制限能力者)とし,その一定の範囲の法律行為を取消しうべきものとして保護を図っている。
責任能力Zurechnungsfähigkeit
違法な行為による民事または刑事の責任を負うことができる資格をいい,民法上は行為の責任を弁識するに足りる知能,すなわち自己の行為が不法な行為として法律上の責任が生ずることを解する精神的能力のこと。これを欠く未成年者または心神喪失者は不法行為による損害賠償責任を負わない。責任能力の有無は個別具体的に判断されるが,意思能力よりやや高度で,だいたい12歳前後から責任能力を有するとされる。

――といった具合です。民法第一編(総則)第一章第二節の 3条以下では単に“能力”という言葉が用いられていますが,これは上記の“行為能力”を意味します。

民法 〔制限能力者の詐術〕

第20条 制限能力者カ能力者タルコトヲ信セシムル為メ詐術ヲ用ヰタルトキハ其行為ヲ取消スコトヲ得ス

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条 理

最近では“不条理ドラマ”などというのもめっきり流行らなくなっちゃったようですが,“条理”とは,広辞苑によると,「物事の道理。すじみち。」となっています。法律における“条理(naturalis ratio)”もほぼこれと同じ意味で,事物の本質的法則,理法をいいます。いわゆる道理がこれにあたり,“社会通念”,“公序良俗”,“信義誠実の原則”などと具体的に表現されることもあります。

技術的な意味では,法の解釈ならびに裁判において法の欠缺(けんけつ)を補充するうえでの基準となります。とりわけ民事事件においては,裁判所が,適用すべき法律や慣習法がないことを理由に,具体的な訴訟事件を拒否することはできませんから。

裁判事務心得 〈明治8年 太政官布告103号〉

第3条 民事ノ裁判ニ成文ノ法律ナキモノハ習慣ニ依リ習慣ナキモノハ条理ヲ推考シテ裁判スヘシ

この規定が現在もなお有効かどうか,また,一般に“条理”を“成文法”,“慣習法”,“判例法”に次ぐ法源として認めるかどうかについては争いのあるところですが,いずれにしても“条理”をないがしろにした,つまり不条理な裁判をなすことは,“条理”ということば本来の意味から考えても許されないというべきでしょう。





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