コンテンツ知的財産論 (大阪工業大学・知的財産学部)
2008年 1月 18日 実施
X(原告)は携帯電話向けストレージ・サービス等を業とする株式会社であり,Y(被告)は著作権等管理事業法に基づき著作権等管理事業を行う社団法人(JASRAC)である。Xは,「MYUTA(マイウタ)」の名称で,インターネットを経由してユーザが CD 等の楽曲を自己の携帯電話で聴くことができるというサービス(以下「本件サービス」という)を提供しようとしていた。すなわち本件サービスは,Xが提供するアップロード用ソフト(以下「本件ユーザソフト」という)を用いて,ユーザが楽曲の音源データを自己のパソコンで携帯電話用ファイルに圧縮・変換し,インターネットを経由してXの運営する「MYUTA サーバ」(以下「本件サーバ」という)のストレージ(外部保存媒体)にアップロードして蔵置し,これを任意の時期に自己の携帯電話にダウンロードできるようにするものである。
Xが平成17年11月頃に本件サービスの試験提供を開始したところ,Yは平成18年2月1日にXに対して本件サービスの中止と権利者の許諾を得た上での再開を申し入れた。その後XY間で本件サービスを巡って書簡が交わされたが,結局Xは,平成18年4月20日に本件サービスをいったん終了し,同年5月17日に,Yに対し,Xの本件サービスの提供についてYが管理著作物の著作権に基づく差止請求権を有しないことの確認を求めて提訴した。すなわち,本件サービスについてはXがYの管理著作物の複製権および公衆送信権(送信可能化権および自動公衆送信権)を侵害する(ゆえにXに対して差止請求権を有する)とのYの主張に対し,Xは,本件サービスにおいてY管理著作物が複製されることは認めた上で,その行為主体はXではなくユーザであり,また本件サーバからユーザの携帯電話へのデータの送信(ダウンロード)は不特定または特定多数の者になされるものではないから公衆送信に該当しない,などと主張した。
請求棄却。
①Xの提供しようとする本件サービスは,パソコンと携帯電話のインターネット接続環境を有するユーザを対象として,CD等の楽曲を自己の携帯電話で聴くことができるようにするものであり,本件サービス……の過程において,複製行為が不可避的であって,〔その〕複製行為は,本件サービスにおいて極めて重要なプロセスと位置付けられること,②本件サービスにおいて,3G2ファイルの蔵置及び携帯電話への送信等中心的役割を果たす本件サーバは,Xがこれを所有し,その支配下に設置して管理してきたこと,③Xは,本件サービスを利用するに必要不可欠な本件ユーザソフトを作成して提供し,本件ユーザソフトは,本件サーバとインターネット回線を介して連動している状態において,本件サーバの認証を受けなければ作動しないようになっていること,④本件サーバにおける3G2ファイルの複製は,上記のような本件ユーザソフトがユーザのパソコン内で起動され,本件サーバ内の本件ストレージソフトとインターネット回線を介して連動した状態で機能するように,Xによってシステム設計されたものであること,⑤ユーザが個人レベルでCD等の楽曲の音源データを携帯電話で利用することは,技術的に相当程度困難であり,本件サービスにおける本件サーバのストレージのような携帯電話にダウンロードが可能な形のサイトに音源データを蔵置する複製行為により,初めて可能になること,⑥ユーザは,……操作の端緒となる関与を行うものではあるが,本件サーバにおける音源データの蔵置に不可欠な本件ユーザソフトの仕様や,ストレージでの保存に必要な条件は,Xによって予めシステム設計で決定され,その複製行為は,専ら,Xの管理下にある本件サーバにおいて行われることに照らせば,本件サーバにおける3G2ファイルの複製行為の主体は,Xというべきであり,ユーザということはできない。
〔上記複製行為におけるの〕と同様に,①……本件サービスの……過程において,音源データの送信行為が不可避的であって,本件サーバから3G2ファイルを送信する行為は,本件サービスにおいて不可欠の最終的なプロセスと位置付けられること,②……本件サーバは,Xがこれを所有し,その支配下に設置して管理してきたこと,③本件サーバによる3G2ファイルの送信は,インターネット回線を介して,ユーザの携帯電話と本件サーバ内の本件ストレージソフトが連動して機能するように,Xによってシステム設計されたものであること,④本件サーバからの送信行為は,本件サーバでの複製行為を前提とするものであり,ユーザが個人レベルでCD等の楽曲の音源データを携帯電話で利用することは,技術的に相当程度困難であること,⑤ユーザは,……操作の端緒となる関与を行うものではあるが,本件サーバによる音源データの送信に係る仕様や条件は,Xによって予めシステム設計で決定され,その送信行為は,専ら,Xの管理下にある本件サーバにおいて行われるものであることに照らせば,本件サーバによる3G2ファイルの送信行為の主体は,Xというべきであり,ユーザということはできない。
……本件サーバは,……認定のとおり,ユーザの携帯電話からの求めに応じて,自動的に音源データの3G2ファイルを送信する機能を有している。……そして,本件サービスは,……認定のとおり,インターネット接続環境を有するパソコンと携帯電話……を有するユーザが所定の会員登録を済ませれば,誰でも利用することができるものであり,Xが……会員登録をするユーザを予め選別したり,選択したりすることはない。「公衆」とは,不特定の者又は特定多数の者をいうものであるところ……,ユーザは,その意味において,本件サーバを設置する原告にとって不特定の者というべきである〔から,〕本件サーバからユーザの携帯電話に向けての音源データの3G2ファイルの送信は,……自動公衆送信(〔著作権〕法2条1項9号の4)ということができる。